左団扇ひだりうちわ)” の例文
旧字:左團扇
それでも娘に婿を取れば、自分は左団扇ひだりうちわで暮らせるなどと大きなことを云っていた。殊に先ごろお酉にむかって、酔ったまぎれに、こんなことを云った。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
左団扇ひだりうちわで暮らしていたら、今日、この露西亜ロシアとの戦争には果たしてこのようにトントンと勝てていたかどうか。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
もとより左団扇ひだりうちわの気持はなかったから、十七のとき蝶子が芸者になると聞いて、この父はにわかに狼狽ろうばいした。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
然るべきお金持の妾にして左団扇ひだりうちわと母親が子供の頃から先をたのしみに育てたのも水の泡、忿懣ふんまんやる方なく因業爺を呪つてゐるが、ことの真相は奈辺にあるやら分りはしない。
母の上京 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
あんな縹緻きりょうのいい娘を持ってサ、おれならお絹物かいこぐるみの左団扇ひだりうちわ、なア、気楽に世を渡る算段をするのに、なんぼ男がよくっても、ああして働きのねえ若造にお艶坊をあずけて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)