小休おや)” の例文
小豆あずきを板の上に遠くでころがすような雨の音が朝から晩まで聞えて、それが小休おやむと湿気を含んだ風が木でも草でもしぼましそうに寒く吹いた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それから病室を出て、数時間というもの小休おやみもなしに、例のずしずしう足早な歩調で、建物の端から端へと歩きつづけた。その日は雨模様だったので、患者たちは庭へ出されなかった。
そうした衝動は小休おやみなく葉子の胸にわだかまっていた。絵島丸の船室で倉地が見せてくれたような、何もかも無視した、神のように狂暴な熱心——それを繰り返して行きたかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
雷電峠と反対の湾の一角から長く突き出た造りぞこねの防波堤は大蛇だいじゃ亡骸むくろのようなまっ黒い姿を遠く海の面に横たえて、夜目にも白く見える波濤はとうきばが、小休おやみもなくその胴腹にいかかっている。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
五月雨さみだれはじめじめと小休おやみなく戸外では降りつづいていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)