宮守やもり)” の例文
鼠ほどもある宮守やもりの絶え間なく這い廻っている……そうした何ともたとえようない寂しい儚ない浅ましい景色を、圓朝は目に描かないわけにはゆかなかった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
夏の夜、まどの外にいつも青蝿のジイジイという悠長な叫びを聞くが、これはきっと宮守やもりに食われたのだろう。わたしは前には一向そんなことに気を留めなかった。
兎と猫 (新字新仮名) / 魯迅(著)
酒場みせの前を避けるようにして、霧次ろじ伝いにさっきの場所まで引返して来た女は、そこの街燈に照された薄暗うすやみの中で、倉庫の板壁へ宮守やもりのようにへばりついたまま
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
何さまの邸には大きな池があって、水の淀んで碧黒いところには水草が一面に漂っていて、夏になれば蛇や蛙宮守やもりの棲家となる、ことにこの池は中々底深いと聞くから
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
体長はゆうに五十フィート以上あり、立上ったその頭は、三十フィートもある宇留陀木ウルタニアの頂からまだ上に出ていた。前肢には宮守やもりのようなみずかきがあり、後肢には偃月刀えんげつとうのような鋭い爪があった。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)