妻恋つまごい)” の例文
旧字:妻戀
不遇の身を湯島の境内に彷徨さまよわせて、鉄欄干に遣瀬やるせのう時を消して暮方に家に帰ろうとする、途中で会った友達夫婦が、一台の荷車の両脇に附添って、妻恋つまごい下通したどおりを向うからかせて来て
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そっちは捕縄とりなわを持つ渡世とせい、私は裏の闇に棲む人間だけれど、思案に余っていることがあるんだから、渡世を捨てて会ってくれる訳には行きませんか。そういうこの私の家は本郷妻恋つまごい一丁目——
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれの心は、一刻も早く、一月寺の支配所へ急いでいたが、大火の晩以来、万吉も妻恋つまごいの家へ身を寄せていたので、とにかく、お綱にもこのよろこびを早く知らしてやる義務があると思った。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はい、本郷妻恋つまごいでござります。一人旅にひけをみせまいと、わざとこんな風姿なりをしておりますが、挿花はなの師匠をしておりますもの、どうぞおついでがありましたら、お訪ねなされて下さいませ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)