女郎屋じょろうや)” の例文
当時はまだ御改革以前の事とて長垂阪なだれざか上の女郎屋じょろうやいたって繁昌はんじょうの折から、木戸前を通りかゝり呼び込まれ候まゝ、こゝに一夜を明し申候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
淫売屋いんばいやから出てくる自然主義者の顔と女郎屋じょろうやから出てくる芸術至上主義者の顔とその表れている醜悪しゅうあくの表情に何らかの高下があるだろうか。
私は母につれられて父をある家へ——今から考えて見るとそれは女郎屋じょろうやである——迎えに行ったことを覚えている。
女郎屋じょろうやだよ。僕は中学校へ入りたいばかりに承知してしまって、今更後悔している」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
御仰おおせの通り昨年冬頃まで召使ひ候旨御答おこたえ申上候処、御役人申され候には、かの慶蔵事新宿しんじゅく板橋辺いたばしへん女郎屋じょろうやにて昨年来身分不相応の遊興致し候のみならず、あまつさへ大金所持致しをり候ゆえ
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
で、鼠入ねずみいらずももうなくなった。長火鉢ながひばちも売られてしまった。金に替えられるものは片っ端から売りとばされた。そしてとうとう、私の番になって来た。つまり、私を女郎屋じょろうやの娘としてだ。
ところがその母もとうとう、私を捨てて行ってしまったのだ。私は母が私を女郎屋じょろうやに売ろうとしたことを思い出さずにはいられない。母はその時、私の幸福のために私を売りたいのだと言った。