大掛児タアクワル)” の例文
それが黒い馬掛児マアクワルに、心もち藍の調子が勝った、薄鼠の大掛児タアクワルを着ている所は、さすがは当年の才人だけに、如何にも気が利いた風采である。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あたかも細かつ強靭なる時計の弾機ぜんまいに触れしが如し。卓を隔てて予と相対す。氏は鼠色の大掛児タアクワルを着たり。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし章太炎しょうたいえん先生は、鼠色の大掛児タアクワルに、厚い毛皮の裏のついた、黒い馬掛児マアクワルを一着している。だから無論寒くはない。その上氏の坐っているのは、毛皮を掛けた籐椅子である。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
胡麻塩の辮髪べんぱつ、白の大掛児タアクワル、顔は鼻の寸法短かければ、何処か大いなる蝙蝠こうもりに似たり。
北京日記抄 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
事務室のまん中の大机には白い大掛児タアクワルを着た支那人シナじんが二人、差し向かいに帳簿をらべている。一人ひとりはまだ二十はたち前後であろう。もう一人はやや黄ばみかけた、長い口髭くちひげをはやしている。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)