大平おおだいら)” の例文
蜿蜒えんえんとして小仏へ走る一線と、どこから来てどこへ行くともない小径こみちと、そこで十字形をなしている地蔵辻は、高尾と小仏との間の大平おおだいらです。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あららぎから道は二つに分かれる。右は清内路に続き、左は広瀬、大平おおだいらに続いている。半蔵らはその左の方の道を取った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大平おおだいら街道だ。道ばたの切石に腰をおろして、こうした山歩きの終わりにはだれもがするように悠々とパイプに火を点じて、FINE の煙文字を蒼穹あおぞらに書いた。
二つの松川 (新字新仮名) / 細井吉造(著)
山道八丁を大平おおだいらと云う所まで登るのだが、平生なら臆病な僕の事だから、恐しくってたまらないところだけれども、一心不乱となると不思議なもので、こわいにも怖くないにも
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大平おおだいらから馬道下の嶮岨けんそな山の上には大木大石を集め、道路には大木を横たえ、急速には通行のできないようにして置いて、敵を間近に引き寄せてから、鉄砲で撃ち立て、大木大石を落としかけたら
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)