多聞寺たもんじ)” の例文
彼女は、そこから少し降りた多聞寺たもんじへ移って、その晩からまた、かねて良人にいわれていたとおり、ただ平凡な母親の任だけを任としていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお今年になっては、奥金剛おくこんごう多聞寺たもんじに避難していた正成の妻子たちが、山づたいに、伊賀の卯木を頼って落ちて来た。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「遠くの陣ばかりか、近くの木見、猫背山、多聞寺たもんじ下の敵兵なども、あわてふためいて、なだれ退がって行きまする。一兵も打って出ず、ここはこうしておりますのに」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「爺、そちと南江正忠は、女子供を守って、千早村へいて行け。山中の多聞寺たもんじをしばしの隠れ家として時節を待つのだ。——なに、なにを不平面するぞ。後ろの安心もいくさの大事。はよう立て」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)