堅緻けんち)” の例文
南方数十歩には、天工のまさかりで削ったような、極めて堅緻けんちの巨岩が、底知れずの深壑しんがくから、何百尺だかわからなく、屹立きつりつしている。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
それからまた、ちょっと見ると火打ち石のように見える堅緻けんちで灰白色で鋭い稜角りょうかくを示したのもあるが、この種のものであまり大きい破片は少なくもこのへんでは見当たらない。
小浅間 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
堅緻けんちなる火山岩は統ぶるものなくうちみだれたり、これとかれと互に合はむとして曾て合はず、満ちし潮のいつしかその罅隙ひまに溢れたるが、はげしき夏の日にあたためられ、ここに適度の温浴を供す。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)