土肥とい)” の例文
重兵衛 その温泉場から遠くない、土肥といの杉山という所です。頼朝よりともが隠れたという大杉が先頃まで残っていましたが、今はもう枯れてしまいました。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ただしこの県伊豆の東西の海岸におのおの一所ずつある土肥といは、これとは別物であろうと思う。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「さようです。家の先祖、武蔵の久下二郎重光が、頼朝公のお旗上げのさい、土肥といの杉山へ一番にはせ参じたところから、御感ぎょかんによって、一と賜わった重代じゅうだいの紋にございまする」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの時わしは、兄三郎盛綱もりつなとともに、まだ二十歳はたちにも足らぬ生若なまわかい頼朝を助けにせ参じた。あの旗挙げの第一戦に、頼朝はさんざんにやぶれ、石橋山から土肥といの杉山へと落ちのびた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)