嘘吐うそつき)” の例文
「へえ、するとあなたの眼に映ずる僕はまだ全くの嘘吐うそつきでもなかったんですね、ありがたい。僕の認めた事実をあなたも承認して下さるんですね」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
栄一が阿波から帰つて来るとその青年は直ちに立ち去つたが、お爺さんやお婆さんはその青年の嘘吐うそつきには驚いて居た。
嘘吐うそつきという言葉がいつもより皮肉に津田を苦笑させた。彼は腹の中で、嘘吐な自分をうけがう男であった。同時に他人の嘘をも根本的に認定する男であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それでは他はみならしの嘘吐うそつきばかりと思って、始めから相手の言葉に耳もさず、心もかたむけず、或時はその裏面にひそんでいるらしい反対の意味だけを胸に収めて
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうでなければ嘘吐うそつきだと思う。嘘吐の方がまだ余っ程父らしい気がする。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さうでなければ嘘吐うそつきだと思ふ。嘘吐うそつきの方がまだ余っ程ちゝらしい気がする。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私はけっしてあなた方をあざむいてはおりません。私があなた方を安心させるために、わざと欺騙あざむきの手紙を書いたのだというものがあったなら、その人は眼の明いた盲目めくらです。その人こそ嘘吐うそつきです。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)