喘息持ぜんそくもち)” の例文
新聞買はずとも世間の噂は金棒引かなぼうひきの女房によつて仔細に伝へられ、喘息持ぜんそくもちの隠居が咳嗽せきは頼まざるに夜通し泥棒の用心となる。
路地 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
この姉は喘息持ぜんそくもちであった。年が年中ぜえぜえいっていた。それでも生れ付が非常な癇性かんしょうなので、よほど苦しくないと決してじっとしていなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
息をセッセはずまして——彼は喘息持ぜんそくもちである——はたから見るも気の毒な位だ。さりながら彼は毫も自分に対して気の毒な感じを持って居らぬ。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
かれの母は喘息持ぜんそくもちだった。老衰しているので、喘息がひどくなって、夜どおし苦しむと、たんを吐く気力もなかった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新聞買わずとも世間の噂は金棒引かなぼうひきの女房によって仔細に伝えられ、喘息持ぜんそくもちの隠居が咳嗽せきは頼まざるに夜通し泥棒の用心となる。
息をセッセとはずまして——彼は喘息持ぜんそくもちである——はたから見るのも気の毒なくらいだ。さりながら彼はごうも自分に対して気の毒な感じを持っておらぬ。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)