咳嗽がいそう)” の例文
六日に至って咳嗽がいそう甚しく、発熱して就蓐じゅじょくし、つい加答児カタル性肺炎のために命をおとした。嗣子終吉さんは今の下渋谷しもしぶやの家に移った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
居士は間もなく激しい咳嗽がいそうと共にそのコップに半分位の血を吐いた。そういう事は一日に数回あった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
その咳嗽がいそうを聞いて連夜よごとねむらぬ父中将のわがまくらべに来るごとに、浪子はほのかにみて苦しき息を忍びつつ明らかにもの言えど、うとうととなりては絶えず武男の名をば呼びぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そいつがだんだん大きくなって肋骨ろっこつの内側をコスり削って咳嗽がいそうを連発さしたり、声帯に伝わる神経を圧迫して声をらしたりし初めるのであるが、それでも本人はまだ気付かない事がある。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
喀血やみ咳嗽がいそうやや減り、一週二回東京より来たり診する医師も、快しというまでにはいたらねど病の進まざるをかいありと喜びて、この上はげしき心神の刺激を避け、安静にして療養の功を続けなば
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)