吉事きつじ)” の例文
るからに執念の留まれるゆゑにや、常にはせるくわい無きも、後住こうぢうなる旗野の家に吉事きつじあるごとに、啾々しう/\たる婦人をんな泣声なきごゑ、不開室の内に聞えて、不祥ふしやうある時は、さも心地好こゝちよげに笑ひしとかや。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
名家の屋形にはけちがついたのである。姫の怨念おんねんは八重垣落しの断崖のあたりをさまよっていて、屋形に凶事きょうじのある前には気味のわるい笑い声がしきりに聞え、吉事きつじにはさめざめとくけはいがする。