取除とりはず)” の例文
壁はまだ乾かず、戸棚へは物も入れずにある。唐紙は取除とりはずしたまま。種々なことを山の上から想像して来た家内には、この住居はあまりに狭かった。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何時来て見てもその油絵だけは取除とりはずさずにあった。岸本はその前に立って岡と話し話し眺めっているうちに、やがて町から罎をげた娘が戻って来た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
相川は金縁の眼鏡を取除とりはずして丁寧に白い帕子ハンケチいて、やがてそれを掛添えながら友達の顔をながめた。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その橇は人力車の輪を取除とりはずして、それに「いたや」の堅い木片で造った橇を代用したようなものだ。梶棒かじぼう後押棒あとかじぼうとあって人夫が二人掛りで引いたり押したりする。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「いよいよ本物かナ」と言って、学士は新しく自分で張った七寸まと取除とりはずしに行った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夏らしく唐紙からかみなぞも取除とりはずしてあって、台所から玄関、茶の間の方まで見透みとおされる。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)