前窓フロント)” の例文
両国橋を渡りかけるころ、前窓フロントのガラスに、雨のしずくが、白い筋をひきはじめた。脇窓から、寒むいろの大川の水が見える。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
小さな階段をいくつもあがって、そろそろだいこんがくたびれかけたころ、旅客機の操縦室のような大きな前窓フロントのあるところへたどりついた。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
川崎をすぎると、前窓フロントにあたる風の音が強くなってきた。沖に白く波がしらがたち、倉庫の尾根の上で、群れ鳩が風にさからいながら輪をかいている。
野萩 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
前窓フロントの中でヘッド・ライトに照らされた京浜国道がまっすぐにつづいている。四、五日すると連合軍が通る道だ。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
川崎をすぎると前窓フロントにあたる風の音がだんだん強くなって来た。沖に白く波がしらが立ち、倉庫の屋根の上で群れ鳩が風に逆いながらぐるぐると輪をかいていた。
ユモレスク (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
前窓フロントにうつるのは稲田の間の長い単調な道だった。透視図を描いてどこまでも直線に伸びている。
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
中村は前窓フロントを見ながら、冷静な顔でこたえた。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)