両国橋を渡りかけるころ、前窓のガラスに、雨のしずくが、白い筋をひきはじめた。脇窓から、寒むいろの大川の水が見える。
小さな階段をいくつもあがって、そろそろだいこんがくたびれかけたころ、旅客機の操縦室のような大きな前窓のあるところへたどりついた。
川崎をすぎると、前窓にあたる風の音が強くなってきた。沖に白く波がしらがたち、倉庫の尾根の上で、群れ鳩が風にさからいながら輪をかいている。
前窓の中でヘッド・ライトに照らされた京浜国道がまっすぐにつづいている。四、五日すると連合軍が通る道だ。
川崎をすぎると前窓にあたる風の音がだんだん強くなって来た。沖に白く波がしらが立ち、倉庫の屋根の上で群れ鳩が風に逆いながらぐるぐると輪をかいていた。