判然はつき)” の例文
自分自身にも判然はつきりと云ひ聞かせるつもりで、富岡との思ひ出ばかりに引きずられてゐてはならないと思つた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
隣りの部屋では、寄りあひでもあるのか、四五人の話しあふ声がふすまごしに聞えた。小降りの雨のなかに、判然はつきりとした山脈が見えた。すゞりをたてたやうな山容である。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
賑やかな市場の呼び声が風の工合か判然はつきりと聞える。富岡はゆき子の頭髪に唇をつけたが、自分の心にはさうした事が、芝居じみてむなしい事をしてゐるやうに思へた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)