凧糸たこいと)” の例文
旧字:凧絲
「へえ、子供の時から慣れておりますからな。子供の時分に、こうして凧糸たこいとを拵えたものでございますよ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
竜吉がその恋文を読んでいるところを、松次郎がいきなり背後うしろから首へ凧糸たこいとの輪をかけて絞めたんだ。
十幾本のはり凧糸たこいとにつけて、その根を一本にまとめて、これをくりの木の幹に結び、これでよしと、四郎と二人が思わず星影寒き大空の一方を望んだ時の心持ちはいつまでも忘れる事ができません。
あの時分 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その竹の筒には凧糸たこいとが通してあります。凧糸の一端に結び文のようなものが附いていることを認めました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
血だらけの匕首あひくちは、すぐ傍の井戸に仕掛けてあつた、凧糸たこいとで釣つて水の下へおろした。玄人くろうとならすぐ氣がつくが、斯うして置けば、あの屋敷の人間にはわかるまい。
「首の右の方の凧糸たこいとに火箸を突っ込んで捻っているから、間違いない右利きですよ」
油紙に包んで凧糸たこいとからげてある包みを解いて見ると、五寸ぐらいに切った一本の竹筒が現われました。その竹筒には何かいっぱいに詰め込まれてあるらしい重味が、なんとなく無気味に思われます。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
井戸側に添つて、一本の凧糸たこいとが水の中まで下つて居るのに氣が付きました。
「二本の糸だよ、——丈夫な凧糸たこいとが二本ありやよかつたのさ。これだ」