凝視みい)” の例文
たかしは彼の部屋の窓から寝静まった通りに凝視みいっていた。起きている窓はなく、深夜の静けさはかさとなって街燈のぐるりに集まっていた。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
ああこんなに面白い生き方もあったのかと、私は固いクッションの上に坐りなおすと、飽きる事もなく、なつかしくいじらしい自分の百面相に凝視みいってしまった。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ややしばらく凝視みいっているうちに、彼の心の裡のなにかがその梢にとまり、高い気流のなかで小さい葉と共に揺れ青い枝と共にたわんでいるのが感じられた。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
と、やがて眼近い夾竹桃きょうちくとうは深い夜のなかで揺れはじめるのであった。たかしはただ凝視みいっている。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)