典雅てんが)” の例文
町家にいたころは、御所の内裏といえば、どんなに典雅てんがで平和で女性にょしょうの幸福を集めているところかと、あこがれていたものである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜといって、運命の中でのおちつき、苦悩の中での典雅てんがというものは、ある忍従を意味するにとどまらない。
洒落しやれ切子細工きりこざいく典雅てんがなロココ趣味の浮模樣うきもやうを持つた琥珀色やひすい色の香水壜。煙管、小刀、石鹸、煙草。私はそんなものを見るのに小一時間も費すことがあつた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
優美いうび典雅てんが勇侠ゆうけふ、魅力を理論的には尊敬し、讃美してはゐたが、假りにこれ等が男性の姿をとつて、私の眼前に現はれたならば、私は本能的にそれ等のものが私の中の何とも共鳴せず
今ははや悲しきほどに典雅てんがなる
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
そして自分のてきせつな、しかも典雅てんがの栄冠をいただいた言葉のゆえに、多くの人々が自分を往来で見知っていて、うやうやしく自分をながめる、ということを考えた。
蘆屋あしやのような典雅てんがな地紋などありませぬが、よい具足を見るようなあらあらとした味のもの。釜の新しきは悪しといいますが、さすがに与次郎、湯味ゆあじ天妙てんみょうの古きものにも劣りませぬ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)