其方退そっちの)” の例文
五十円で買われて来た市川某尾上某の一座が、団十菊五芝翫しかん其方退そっちのけとばかり盛に活躍する。お米は近眼の彼には美しく見えた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
熱が三日も続くと、山下さんは会社の仕事を其方退そっちのけにして、診察に立ち会う。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お勢さん位の年恰好かっこうでこんなに縹致きりょうがよくッて見ると、学問や何かは其方退そっちのけで是非色狂いとか何とかろくな真似はしたがらぬものだけれども、お勢さんはさすがは叔母さんの仕込みだけ有ッて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そして人のいい夫を其方退そっちのけにして、傭い人を見張ったり、金の貸出方かしだしかた取立方とりたてかたに抜目のない頭脳あたまを働かしていたが、青柳の顔が見えると、どんな時でも彼女の様子がそわそわしずにはいなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
雨間あままを見ては、苅り残りの麦も苅らねばならぬ。苅りおくれると、畑の麦が立ったまゝに粒から芽をふく。油断を見すまして作物さくもつ其方退そっちのけに増長して来た草もとらねばならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)