入母屋いりもや)” の例文
ただわずかに残って、今にそびえる天守閣の正しい均斉、その高欄こうらんをめぐらし、各層に屋根をつけた入母屋いりもや作りのいらか、その白堊はくあの城。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
切妻きりづま入母屋いりもや寄棟よせむね等形は様々に分れますが、いずれも深く軒を張るのがその特色です。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
後ろについて、西廻廊の出口から、履き物をはきかえ、御手洗川の石橋を渡ってゆく。入母屋いりもや式の、平安朝風、鉄筋コンクリート。歌舞伎座を小さくしたみたいな耐火建築だ。おやおやいけない。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は更に俯瞰ふかんして、二層目の入母屋いりもやいらかにほのかに、それは奥ゆかしく、薄くれないの線状の合歓ねむの花の咲いているのを見た。樹木の花を上からこれほど近くしたしく観ることは初めてである。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
入母屋いりもやの甍ににほふ合歓のはな犬山の城は白く久しき
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)