優柔おとな)” の例文
で、優柔おとなしく頬被りを取った顔を、と見ると迷惑どころかい、目鼻立ちのきりりとした、細面ほそおもての、まぶたやつれは見えるけれども、目の清らかな、眉の濃い、二十八九の人品ひとがら兄哥あにいである。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
サの字が無ければ、今夜も優柔おとなしく、と言えば体裁がい、指をくわえて引込もうと、きっと思ってじっと視ると、波打つ胸の切符に寄せる、夕日に赤いなぎさを切って、千鳥が飛ぶように、サの字が見えた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)