偏窟へんくつ)” の例文
彼は「少し真面目まじめになったかね」とおとなしく受けるし、彼が須永に「君はますます偏窟へんくつに傾くじゃないか」と調戯からかっても
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小僧に盃を差すう云うような次第で、一寸ちょいと人が考えると私は奇人偏窟へんくつ者のように思われましょうが、決してうでない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
とても生やさしいおやじではないといって、その偏窟へんくつぶりを勘左衛門からいろいろ聞かされたことだった。で、長崎も苦笑に終り、いつか陣務の忙しさに、それは忘れていたのである。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分と関係のない島田の事などはまるで知らないふりをして澄ましている日も少なくなかった。彼女の持った心の鏡に映る神経質な夫の影は、いつも度胸のない偏窟へんくつな男であった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本当に朋友になって共々に心事を語る所謂いわゆる莫逆ばくげきの友と云うような人は一人もない、世間にないのみならず親類中にもない、といって私が偏窟へんくつ者で人と交際が出来ないと云うではない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そうかと思うと、「こんな偏窟へんくつじゃこの子はとても物にゃならない」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「相変らず偏窟へんくつねあなたは。まるで腕白小僧見たいだわ」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)