係蹄けいてい)” の例文
私は兎の係蹄けいていの仕掛けてあるほとり、大きな石の上に三脚を立てて、片足は折敷いて、危うき姿勢に釣合つりあいをとりながら、ここの写生を試みた。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
或はまた、それよりもまた更に数年も以前に、私は病を養つてゐた信州の山間で、ある日路傍の山がつから係蹄けいていにかかつた野兎を一羽貰ひうけた。
柘榴の花 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
要するに観測器械としての感官を生理的心理的効果の係蹄けいていから解放することが、ここに予想される総合的実験科学への歩みを進めるために通過すべき第一関門であろうと思われる。
感覚と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「ここにいたち係蹄けいていが仕掛けてあるよ」「あれがひよどりを捉える羽子はごだ」そして、「きのこを生やす木」などと島吉が指さすのを見ながら、これが東京とは思えなかった。月日のない山中の生活のようだ。
酋長 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
結婚は生の闘争に対して婦人を無能にし、彼女の社会的意識を根絶し、彼女の想像力を麻痺し、而して後その恩恵的保護を科する、それは真に人間品性に対する係蹄けいていであり、モヂリ詩文である。
結婚と恋愛 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)