侏儒いっすんぼうし)” の例文
「いいえ、私が何かしようとすると、時々目の前へ出て来るんです。……かみしもを着た、頭の大きな、おかしな侏儒いっすんぼうしですがね。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
歌につれて踊り出したのは、三尺足らずの侏儒いっすんぼうしで、頭ばかりが人並よりも大きく、手足が子供さながらの体を、独楽こまのように廻したり、たこのように泳がせたりした。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あれにくらべると侏儒いっすんぼうしです、支那の山水画は人間の手に出来たものの最上至極のものです、あれがみんな写生ですよ……西洋画の写生よりも、もっと洗練された写生なんです
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
首を貫ぬいて五、六丈もあろうかと思うような、黒い巨人が、ヌーッと立っている、富士登りの道者のいう、三尊の阿弥陀の来迎はこれだ、侏儒いっすんぼうしのような人間が、天空に映像されたときに
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
杖のさきが、肩をいて、頭の上へ突出ている、うしろむきのその肩が、びくびくと、震え、震え、脊丈は三尺にも足りまい。小児こどもだか、侏儒いっすんぼうしだか、小男だか。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)