他目わきめ)” の例文
竜之助一人を泊めて狭しとするでもなかろうに、他目わきめもふらず、とうとう坂の下の宿を通り越してしまいました。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
交通巡査が交通巡査に——看護婦が看護婦に——百姓が百姓に——職工が職工に——すべての職業人が天職に向つて他目わきめも觸らないでゐる働きぶりを見かけると、偉い、と眞底から思ふ。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
いちずに目的に向って他目わきめも振らないのが物足りないだけ、それだけ頼もしいと思っていたのに——
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
歯を食いしばったままで、サッサと人混みを通り抜けて、他目わきめもふらずに両国橋を渡って行く挙動は、おかしいというよりは、確かにものすさまじい挙動でありました。
人間と交渉を断って、科学と建造に他目わきめもふらぬ今の生涯には、過去は知らないが、少なくとも今の生涯には、自分として多くの満足を見出せばとて、悔いを残してはいないはずだ。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
盤屈ばんくつして或いは蛇のように走り、或いはがまのような穴になっている、その間を程よくとり拡げて、徳利を納めるために他目わきめもふらず突っついていましたが、ふいと、また一つの物影が