乾門いぬい)” の例文
大手へ行く町通りを避けて、乾門いぬい搦手からめてへ行く草原の中の町を、夜露に裾を濡らしながら、うつつに歩いてゆく彼女だった。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その中では、誰も皆、かかとが地につかないように歩いていたが、唯一人、高安平四郎だけは、終日ひねもす、冷然と、乾門いぬいの番衆小屋に腰かけて、人の噂に口を入れなかった。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)