上毛じょうもう)” の例文
数丈すうじょう樹上じゅじょうから目をひらけば、甲斐かい秩父ちちぶ上毛じょうもう平野へいやかんしゅう、雲の上から見る気がして、目がくらむかもわからない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長谷川昆渓は上毛じょうもう高崎の城主松平右京亮輝充うきょうのすけてるみちの儒臣。名は域、字は子肇、通称を与一郎という。この時年三十五である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そうして、鉛のような雨雲を無限に送り出して来る、いわゆる「上毛じょうもうの三名山」なるものを呪わしく思うようになった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
下は赤城あかぎより上毛じょうもうの平原を見晴らしつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
天保八年某月『繁昌記』のために罰せられて江戸市中に居住することを禁ぜられたので、髪を削って武州秩父ちちぶ辺より上毛じょうもうの間を流浪し知人の家に泊り歩いていた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私はいよいよ痛切に「どうも困ります」を感じずにはいられなくなった。そうして、鉛のような雨雲を無限に送り出して来るいわゆる「上毛じょうもうの三名山」なるものをのろわしく思うようになった。
磯部の若葉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)