上方訛かみがたなま)” の例文
「せやさかい」というのが口ぐせであり、江戸弁は荒っぽいから、しょうばいには上方訛かみがたなまりに限る、というのがその主張であった。
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
主八の宗助は五十六七の粗野そやな男で、生れながら町人ではないらしく、手足の荒れ、肩幅の廣さ、どこから見ても勞働者あがりで、言葉にはひどい上方訛かみがたなまりがあります。
津村の人柄にもどこか大阪のぼんちらしいおっとりした円みが出来、まだ抜け切れない書生言葉のうちにも上方訛かみがたなまりのアクセントが、———前から多少そうであったが
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「帰って来たんだが」とその客は少し上方訛かみがたなまりのある言葉で云った。「どうやら、またでかけなければならないようだ」
夜の蝶 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
主人の死んだ後の店を引受けてやつて居るのは、善七といふ若い番頭で、精々三十にもなるでせうか、色白の優男で、少し上方訛かみがたなまりはありますが、客扱ひは申分ありません。