三白眼さんぱくがん)” の例文
藤波は立ちどまって、くるりと向きなおると、切長きれなが三白眼さんぱくがんでチラチラと顎十郎の顔を眺めながら
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
短い角刈にした小さい頭と、うすい眉と、一重瞼ひとえまぶた三白眼さんぱくがんと、蒼黒あおぐろい皮膚であった。身丈は私より確かに五寸はひくかった。私は、あくまで茶化してしまおうと思った。
逆行 (新字新仮名) / 太宰治(著)
どんな意味で云ったのか、僕だけの解釈では、僕以外の誰かに、済まなさを感じていたのであろう。——僕は彼女を知る前に、一人の少女を愛していた。骨格がするどく、三白眼さんぱくがんに近い。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
森さんが「いやいやらしいッたら、ありゃしない。此奴こいつったら」と、ぼくのほうをあごでしゃくって、「ウインクの真似まねをしてやがるんだ。こんなにしてな」と、さも厭らしく三白眼さんぱくがんをむいてみせます。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
平次は、少し三白眼さんぱくがんひさしを睨んで、若々しい顏を擧げました。