一端いっぱし)” の例文
お作は柳町まで来て、最中もなかの折を一つ買った。そうしてそれを風呂敷に包んで一端いっぱし何かむくいられたような心持で、元気よくあるき出した。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
……それもこの出来そこないの世界を、新発明の火薬で爆発させるとか、蛙の卵から人間を孵化させるといったような、一端いっぱし、気の利いた研究ならまだしもの事
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お前がその盲目めくらだから悪い事を働いて、一端いっぱし己の目を盗んだ気で洒亜々々しゃあしゃあとしているんだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人は高坂のみい、私の名ですね、光坊みいぼうが魔にられたのだと言いました。よくこの地で言う、あの、天狗てんぐさらわれたそれです。また実際そうかも知れんが、幼心おさなごころで、自分じゃ一端いっぱし親を思ったつもりで。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)