一存いちぞん)” の例文
まるで自分の一存いちぞんで来たような落付きようで、ほかに相客あいきゃくの一人もない静かな廊下を濶歩かっぽして行って湯につかったり、スキーを習ったりしていたが
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
通船楼の若いおかみさんは、清吉には苦手にがてなお客様とみえる。せめて二十両でといえば、良人うちのひとに着せるのだから、自分の一存いちぞんではそう高く買えないと云う。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わたくしの一存いちぞんにとりはからいましても、よろしいものでございましょうか?」
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私はKと同じような返事を彼の義兄あてで出しました。そのうちに、万一の場合には私がどうでもするから、安心するようにという意味を強い言葉で書き現わしました。これはもとより私の一存いちぞんでした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もとよりわたくしの一存いちぞんには覚えのないことばかりでございますが。……
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)