一子いっし)” の例文
老僧はなおも父が病中母をののしったこと、死際しにぎわに大塚剛蔵に其一子いっしを托したことまで語りました。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
彼と交誼こうぎを結ばん事を望み居たれば、この人によりて双方の秘密を保たんとて、親戚の者より同医にはかる所ありしに、義侠ぎきょうに富める人なりければ直ちに承諾し、己れいまだ一子いっしだになきを幸い
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
永井平馬の一子いっし平太郎が、永井和泉守相続人として、明日は将軍御目見という時、三年前神隠しに逢って野州二荒山ふたらさんの奥にいたという和泉守一子鉄三郎が江戸に立還たちかえり、改めて家督相続を願い出で
一時の悲痛苦悶はさることながら、自分にも一子いっしを分ちて、家庭のひややかさを忘れしめよとあるに、これいなみがたくして、われと血を吐く思いを忍び、彼が在郷中の苦痛をやわらげんよすがにもと
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)