一夜中ひとよじゅう)” の例文
彼は相不変あいかわらず人を避けて、山間の自然に親しみ勝ちであった。どうかすると一夜中ひとよじゅう、森林の奥を歩き廻って、冒険を探す事もないではなかった。その間に彼は大きな熊やししなどを仕止めたことがあった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は酒にひたりながら、洞穴の奥にうずくまって、一夜中ひとよじゅうよい泣きの涙を落していた。彼の心は犬に対する、燃えるような嫉妬しっとで一ぱいであった。が、その嫉妬の浅間あさましさなどは、寸毫すんごうも念頭にはのぼらなかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)