黒猫くろねこ)” の例文
見上げると、天井に交錯こうさくした丸太棒まるたんぼうの上を、さいぜんの笑い声のぬしが、一匹の黒猫くろねこのように、眼にも見えぬ早さで走っていた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
其處そこへあの、めす黒猫くろねこが、横合よこあひから、フイとりかゝつて、おきみのかいたうた懷紙ふところがみを、後脚あとあしつてて前脚まへあしふたつで、咽喉のどかゝむやうにした。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
幸坊かうばう黒猫くろねこについて、きつねの巣へ行きました。穴の口もとに来ると、黒猫は三味線さみせんをひいてうたひ出しました。
幸坊の猫と鶏 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
ねこほうも、「そらた。」というなり、三毛猫みけねこ虎猫とらねこ黒猫くろねこ白猫しろねこ、ぶちねこ、きじねこ、どろぼうねこやのらねこまで、これも一門いちもんのこらずきばをとぎそろえてかっていきました。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
嘉ッコは、黒猫くろねこをしっぽでつかまへて、ギッと云ふくらゐに抱いてゐました。向ふ側ではもう学校に行ってゐる嘉ッコの兄さんが、かばんから読本とくほんを出して声を立てて読んでゐました。
十月の末 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「船幽霊」の歌の上に黒猫くろねこが描いてあったり、「離魂病」のところに奇妙なの絵が添えてあったりするのもこの詩人の西欧的な空想と連想の動きの幅員をうかがわせるもののようである。
一隅に小さい葛籠つづら、その傍に近所の人の情けでこしらえた蒲団ふとん赤児あかごがつぎはぎの着物を着て寝ていて、その向こうに一箇の囲炉裏いろり、黒い竹の自在鍵じざいかぎ黒猫くろねこのようになった土瓶どびんがかかっていて
ネギ一束 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
あらず、そは馴染なじみたる黒猫くろねこなりき。ふくらなるおどらせて
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
炬燵こたつうへ黒猫くろねこ
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
さかんなるかな炎暑えんしよいろ蜘蛛くもまぼろしは、かへつ鄙下ひなさが蚊帳かやしのぎ、青簾あをすだれなかなる黒猫くろねこも、兒女じぢよ掌中しやうちうのものならず、ひげ蚊柱かばしら號令がうれいして、夕立ゆふだちくもばむとす。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
嘉ッコは、黒猫くろねこをしっぽでつかまえて、ギッと云うくらいにいていました。向う側ではもう学校に行っている嘉ッコの兄さんが、かばんから読本とくほんを出して声を立てて読んでいました。
十月の末 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
トあれよ、かうべしたつて、並木なみきまつえだからえだへ、土蜘蛛つちぐもごと黒猫くろねこがぐる/\とひながら。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
元二げんじが、一膳いちぜんめしまへはなれて、振返ふりかへる、とくだん黒猫くろねこが、あとを、のそ/\と歩行あるいてる。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)