骨柄こつがら)” の例文
器量骨柄こつがらが尋常を絶した人々も、一代の間にはこの小さな島をさえ統一し得ず、次々と衰えて子孫は永続しなかった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
滄州牢城の牢営長は、公文の差紙さしがみを見た日すでにこうつぶやいた。そしてなお、じっさいの人間を白洲しらすで見るにおよび、いちばいその骨柄こつがらに惚れ込んだ容子ようす
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四十前後の立派な武士、妹の早瀬よりも人間味があって、何としても主殺しなどをしそうもない骨柄こつがらです。
そのうえ、どことはなく人品骨柄こつがらに渋みがあって鍛えられたところがあって、えすらもがたたえられて、さすがは名取りの焼き人形師と思われる名工ぶりでした。
其の姿なり藍微塵あいみじんの糸織の着物に黒の羽織、絽色鞘ろいろざや茶柄ちゃつかの長脇差を差して、年廿四歳、眼元のクッキリした、眉毛まゆげの濃い、人品骨柄こつがらいやしからざる人物がズーッと入りましたから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
引開ひきあけて直しける雪踏せつた鼻緒はなをいとふとき心を隱す元益が出てしづ/\進み入に店の者等は之を見ればとし三十路みそぢたらざれど人品じんぴん骨柄こつがらいやしからず黒羽二重くろはぶたへに丸の中に桔梗ききやうもんつきたる羽織はおり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
尚おその以前に木山弾正きやまだんじょうという勇者がこの辺にございまして、一度清正公を組み伏せたことがあります。五郎は骨柄こつがらすぐれたところが弾正の生れかわりだろうという評判でございました。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あるいは部落ゾオンにたぐまる吸殻メゴ屋の情婦にでもなりかねぬ末たのもしい面相骨柄こつがら
座長と見える老爺など終生水呑百姓みずのみびゃくしょうの見るからに武骨そのものの骨柄こつがらであるが、巧みに女形をしこなして優美哀切を極め、涙の袖をしぼらせること、いつの年も変りがないということである。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
慇懃いんぎんに吾を導くにまかせ、次第に峰に上るうち、御嶽おんたけ山頂の砦に着き、御嶽冠者に逢って見れば、噂にまさる人品骨柄こつがら、智徳兼備の大将振りに、吾ことごとく感に入り、その一党の仲間となり
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その眼もとも、父太子に似て涼しく澄んでゐたが、それでゐて人品骨柄こつがらは全体として父親とは似てもつかず、あくまで大ぶりで筋骨逞ましく、気骨もそれによくふさつて稜々りょうりょうたるものがあつた。
鸚鵡:『白鳳』第二部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
呼延灼こえんしゃくをごらんあって、徽宗もたいそう頼もしがられた。風貌、物ごし、音声おんじょう、まさに万夫不当ばんぷふとう骨柄こつがらである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母にてそうろふ者子無きことを悲み、此十王堂に一七日こもり、満ずるあかつきに霊夢のつげあり、懐胎して十八月にしてそれがし誕生せしに、骨柄こつがらたくましく面の色赤く、向ふ歯あつて髪はかぶろなり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
見れば上段のみすの前にかしら半白はんぱくにして有てたけからぬ一人のさふら堂々だう/\として控へたり是ぞ山内伊賀亮いがのすけなり次は未壯年さうねんにして骨柄こつがらいやしからぬ形相ぎやうさうの侍ひ二人是ぞ赤川大膳だいぜんと藤井左京さきやうにて何れも大家の家老職と云ともはづかしからざる人品じんぴんにて威儀ゐぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「どう見ても、世評を裏切らぬうつけ者、容貌きりょうはよし、骨柄こつがら一通ひととおりじゃが、すこし足らぬ。……ここが」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
願奉ると叮嚀ていねいに述ければ圍爐裡ゐろりはたに年頃卅六七とも見ゆる男の半面はんめん青髭あをひげはえ骨柄こつがらのみいやしからざるが火にあたりて居たりしが夫はさだめし難澁なんじふならん疾々とく/\此方こなたあがり給へ併し空腹くふふくとあればすぐに火にあたるよろしからず先々臺所だいどころへ行て食事しよくじいたし其火のへんより玉へといと慇懃ねんごろに申けるに吉兵衞は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
土豪には土豪の土臭どしゅう、武者には武者の骨柄こつがらがあるものだが、正成には、そんなりきみがどこにもなかった。
そのため、めっきり気丈者になり、骨柄こつがらも失礼ながら、あなた様に髣髴ほうふつたるものが見え参りました。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坂東者ばんどうものに多い特有な骨柄こつがらなのだ。それに、幼いときの疱瘡ほうそうのあとが、浅黒い地肌に妙な白ッぽさを沈めており、これも女子には好かれそうもない損の一つになっている。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下役どもより聞いた御年配、骨柄こつがら、きょう半日の城下でのお歩きの様子など、思いあわせて、尊公との推察は、よもはずれぬものと、自信をもってお迎えしたわけでござる
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はい。一見ただの旅商人にすぎませんが、ちょっと話してみても尋常な骨柄こつがらでないことはすぐ分りました。なにせい、隠岐のご配所まで忍んで渡ったと申すほどな男ですから」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
覆面こそしていた由だが、火光歴々れきれき骨柄こつがらから働き振りまで、秦明その者にまぎれなしと、目撃した兵のすべてが一致した声だ。憎ッくい奴め。よくも慕蓉ぼようの恩寵を裏切りおったな。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猟師にしては、どこか骨柄こつがらひいでたところが見えたからである。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よい骨柄こつがらの若者。これが、自分のおとうとだったか。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)