馬方うまかた)” の例文
馬方うまかた馬方うまかた喧嘩けんくわをはじめました。すなツぽこりの大道だいどうべたで、うへになつたりしたになつたり、まるであんこ のなか團子だんごのやうに。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そう言って甚兵衛じんべえは、仲間の馬方うまかたや村の人達の間をたずね廻りましたが、誰一人としてそんなことを知ってる者はいませんでした。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
部落の人達も、植付期うえつけどきとか収穫期とりいれどきとかの、農繁期になると、子供の馬方うまかたで間に合うようなときには、伝平をわざわざ頼みに来た。
(新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
馬方うまかたひますと、うま片足かたあしづゝたらひなかれます。うま行水ぎやうずゐわらでもつて、びつしよりあせになつた身體からだながしてやるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
夏の炎天神田かんだ鎌倉河岸かまくらがし牛込揚場うしごめあげばの河岸などを通れば、荷車の馬は馬方うまかたと共につかれて、河添かわぞいの大きな柳の木のしたに居眠りをしている。
なにかと思って見ると、街道稼かいどうかせぎの荷物持にもつもちか馬方うまかたらしいならず者がふたり、黒鉄くろがねをはやしたようなうでぶしをまくりあげて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬方うまかたらは夜行には、たいてい十人ばかりもむれをなし、その一人がく馬は一端綱ひとはづなとてたいてい五六七ぴきまでなれば、常に四五十匹の馬の数なり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この場合において馬方うまかたは資本家であり、馬は労働者である。ただ人間の労働者とちがうのは、口が利けない事である。プロパガンダの出来ない事である。
鑢屑 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのクリスマスの晩に、テナルディエ飲食店の天井の低い広間の中では、馬方うまかたや行商人など数人の男が、四、五の燭台しょくだいのまわりに陣取って酒を飲んでいた。
一風いっぷう変わったつもりか知らないけど……。それから、すぐに鼻唄はたうたを歌ったり、歯と歯の間で口笛を吹いたり、気楽な馬方うまかた真似まねをしたら、今度は承知しないよ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
でも心配しんぱいなので、おとうさんがうしろからそっとついて行きますと、たにしの子は馬の上から、馬方うまかたのするとおりかけ声ひとつで、きように馬を進めて行きました。
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ぱらつたか、寢込ねこんだか、馬方うまかため、馬鹿ばかにしやがると、異説いせつ紛々ふん/\たるところへ、提灯ちやうちん片手かたていきせいて
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしは、いわれるままにっていました。そのうちに馬方うまかたは、うまいていってしまいました。ガラガラとくるまおとは、しばらくとおくなるまでわたしみみこえていました。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
下僕しもべとか馬方うまかたとかいうような者は、皆合羽かっぱを着て居るから好都合であるけれども、金襴きんらんの衣裳を着けた大臣達は、顔も手先も雨と霰に打たれながらびしょ濡れになって
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
身体は動くし、車の音はするし、馬方うまかた無暗やけに馬を叱るもんだから、なかなか寝られやしない。少しうとうとすると直ぐに目が覚めてしまう。そのうちに明るくなって来た。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
案内に来た青年は馬方うまかたで、馬力ばりきの荷物のうしろの方に空所あきを作って、そこに座布団を敷いて、三味線と、下駄を抱えた女を乗せると、最新流行のスットントン節を唄いながら
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかしわたしは何かわたしの仕事をさせるために馬や牛をらし、それを下宿させておくようなことはしない。わたしが単なる馬方うまかたまたは牛飼いになることを恐れるからである。
おれは、悟空の文盲もんもうなことを知っている。かつて天上で弼馬温ひつばおんなる馬方うまかたの役に任ぜられながら、弼馬温の字も知らなければ、役目の内容も知らないでいたほど、無学なことをよく知っている。
銀座か新宿——もっとも当時の新宿は甲州街道で、お百姓と馬方うまかたやし車と蠅の行列だったものだが——とにかく女給かダンサーにでもなって華やかな日を送りたいという心掛けだから
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ある田舎いなかの山里に、甚兵衛じんべえという馬方うまかたがいました。いたってのんき者で、お金がある間はぶらぶら遊んでいまして、お金がなくなると働きます。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
馬方うまかた牛方うしかた、人足の世話から、道路の修繕、助郷すけごう掛合かけあいまで、街道一切のめんどうを見て来たその心づかいは言葉にも尽くせないものがあった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
口をきいてるのを聞くと憲兵かとも思われ、酒を飲んでるところを見ると馬方うまかたかとも思われ、コゼットをこき使ってるところを見ると鬼婆おにばばとも思われるほどだった。
これなどは荷馬車が多くなった時代に、主として馬方うまかた篤志とくしではこんだということで、これにもやはり行くさきが書いてあるのを、読める人がもう多くなったおかげであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
田のなかで草をとっていたお百姓ひゃくしょうたちは、馬方うまかたのかげも見えないのに、たわらをつけた馬だけが、のこのこ、畑道はたけみちをあるいて行くうしろ姿すがたを、みんなふしぎそうに見送っていました。
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
船頭せんどう馬方うまかた木樵きこり機業場はたおりば女工ぢよこうなど、あるがなかに、木挽こびきうたうたはなかつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
普請中ふしんちゅう貸家かしやも見える。道の上には長屋の子供が五、六人ずつ群をなして遊んでいる。空車からぐるまを曳いた馬がいかにも疲れたらしく、たてがみを垂れ、馬方うまかたの背に額を押しつけながら歩いて行く。
元八まん (新字新仮名) / 永井荷風(著)
むら酒屋さかや店前みせさきまでくると、馬方うまかたうまをとめました。いつものやうに、そしてにこにことそこにはいり、どつかりとこしをろして冷酒ひやざけおほきなこつぷ甘味うまさうにかたむけはじめました。一ぱいぱいまた一ぱい
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「わたしは、みんなにれるとひどいめにあいますから、ここからかえりますよ。ぼっちゃんは、いまあっちからくる馬方うまかたたのんであげます。」と、おんなはいって、ガラガラとうまくるまかせてきた馬方うまかた
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そんなでも、うま荷物にもつをつけ、合羽かつぱむら馬方うまかたかれてゆきみちとほることもありました。とうさんが竹馬たけうまうへから
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
物馴ものなれた旅人が狐の尻尾を腰さげにして、わざとちらちらと合羽かっぱの下から見せ、駕籠屋かごや馬方うまかた・宿屋の亭主に、尊敬心を起こさせたという噂は興味をもって迎えられ、甚だしきはあべこべに
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
車力しゃりき馬方うまかたが多い時には五人も六人も休んで飯をくっている事もあった。
引手ひきて馬方うまかたもない畜生ちくしやうが、あの大地震おほぢしんにもちゞまない、ながつらして、のそり/\と、大八車だいはちぐるまのしたゝかなやつを、たそがれのへい片暗夜かたやみに、ひともなげにいてしてる。重荷おもにづけとはこのことだ。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬方うまかたの甚兵衛さん、お願いですから、助けて下さい」
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「ここだ。」といって、馬方うまかたくるま
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうさんがおうちもんそとますとうま近所きんじよ馬方うまかたかれてとうさんのまへとほります。このうま夕方ゆふがたになると、きつとかへつてるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)