とぢ)” の例文
古書こしよ渋海しぶみ新浮海しぶみとも見えたり。此川まがくねり、広狭ひろせまい言ひつくすべからず。冬は一面に氷りとぢてその上に雪つもりたる所平地のごとし。
とぢて控へたり此時名主なぬし甚左衞門進出て申す樣只今願のおもむ委細ゐさい承知しようち致したり扨々驚き入たる心底しんてい幼年には勝りし發明はつめい天晴あつぱれの心立なり斯迄思込おもひこみし事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仏蘭西フランスの男子もまた女子を家庭にとぢ込め、日常の雑用と台所むきの仕事とのみに犠牲たらしめようとするのでは無からうか。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
もう待草臥まちくたびれたと云ふやうに鏡子が目をとぢて居る所へそのはいつて来て、汽車はぐ動き出した。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
人々ひと/″\同意どういえて一時いちじくちとぢたけれど、其中そのうち二三人にさんにんべつ此問このとひめず、ソフアにうづめてダラリと兩脇りやうわきれ、天井てんじやうながめてほそくしてものもあれば
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
きりもかゝり、しももおりる……つきくもればほしくらし、大空おほぞらにもまよひはある。まよひも、それおだやかなれども、むねふさが呼吸いきとぢる、もやくやなあとの、いなびかり、はたゝがみを御覽ごらんぜい。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三田は折角夢中になつてゐた本をとぢる氣にならないで、さも面倒臭さうにふり向いた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
とぢて居ければ此上はことばを以て諭さん樣もなく拷問がうもんに及ぶより外はなしと思はれしなり然れどもなほしづかに長庵を見られ如何に長庵ふだつじ人殺ひとごろしのつみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其れでし彼等子女の目に触れて有害な物があれば其等を社会から滅絶させるか、社会の一都にとぢ込めて隔離するかの手段を取るのがよろしいと思ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
水中すゐちゆうよりあをき火閃々ひら/\ともえあがりければ、こは亡者まうじや陰火いんくわならんと目をとぢてかねうちならし、しばらく念仏して目をひらきしに、橋の上二けんばかりへだて
此男このをとこちゝしんあと市街外まちはづれにちひさな莊園しやうゑん承嗣うけついだので、この莊園しやうゑんこそ怠惰屋なまけやみせともいひつべく、そのしろかべ年古としふりくづち、つたかづらおもふがまゝに這纏はひまとふたもん年中ねんぢゆうあけぱなしでとぢたことなく
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
付け其上に悴惣内夫婦の者を殺したる爰な大惡人あくにんめと泣聲に成て窘付きめつけれども九助はたゞとぢて物言ず居たりしは誠に覺悟を極しと見えいとゞあはれまさりける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
如何いかに家庭にとぢ込めて置けばとてそれ等の悪風がまつたく若い女子の耳目じもくに触れないとは定められないでせう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
銀之助は外套ぐわいたうも脱がないで両臂りやうひぢを食卓に突いたまゝとぢて居る。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)