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ふりがな文庫
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辿
(
たど
)” の例文
とりあえず
闇
(
やみ
)
の中を駅前の交番まで
辿
(
たど
)
りついてきいてみたが「さあ、今頃になって宿は無理でしょうな」と巡査は極めて冷淡である。
I駅の一夜
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
小便の海を
渉
(
わた
)
り歩いて小便壺まで
辿
(
たど
)
りつかねばならぬような時もあった。客席の便所があのようでは、楽屋の汚なさが思いやられる。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
お勢は引返しましたが、間もなく出て来ると、平次と肩を並べて、月のない街を、横網の方へ——妙にそわそわしながら
辿
(
たど
)
りました。
銭形平次捕物控:018 富籤政談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
鳥の前生譚だけは前にも列挙したように、少しも道徳味のないものが幾らもあって、民話は久しい間別の経路を
辿
(
たど
)
っていたのである。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
不愉快に
充
(
み
)
ちた人生をとぼとぼ
辿
(
たど
)
りつつある私は、自分のいつか一度到着しなければならない死という境地について常に考えている。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
やっとのことで私達はその大きな硝子工場の前まで
辿
(
たど
)
りついた。私は急にいじけて、たかちゃんのあとへ小さくなって附いていった。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼はまばらな星明かりを頼りにして、方角をよく知らない田圃みちをさまよいながら、どうにかこうにか大音寺前まで
辿
(
たど
)
って行った。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
こういう友達と一緒に、捨吉は薄暗い世界を
辿
(
たど
)
る気がした。若いものを恵むような
温暖
(
あたたか
)
い光はまだ何処からも射して来ていなかった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
何人も
窺
(
うかが
)
い得ないような巨木や密生した熊笹で蔽われ、道は、意識的に、
紆余曲折
(
うよきょくせつ
)
して造られ、案内なしでは、とても
辿
(
たど
)
りつけない。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すなわち、
扉
(
ドア
)
向うの壁に、三つ並んでいる洗手台の
栓
(
せん
)
を開け放しにして、そこから溢れてくる水に、自然の傾斜を
辿
(
たど
)
らせたのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
或る一つの作品を書かうと思つて、それが色々の径路を
辿
(
たど
)
つてから出来上がる場合と、直ぐ初めの計画通りに書き上がる場合とがある。
一つの作が出来上るまで:――「枯野抄」――「奉教人の死」――
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
笹の峰、薬王坂などの険しい道を進み、ようやく
横川
(
よかわ
)
の
解脱谷
(
げだつだに
)
にある
寂定坊
(
じゃくじょうぼう
)
に
辿
(
たど
)
り着かれた。ところが多くの僧たちは騒ぎ立てた。
現代語訳 平家物語:08 第八巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
第一日は
物部川
(
ものべがわ
)
を渡って
野市
(
のいち
)
村の従姉の家で泊まって、次の晩は
加領郷
(
かりょうご
)
泊り、そうして三晩目に
室津
(
むろつ
)
の町に
辿
(
たど
)
り付いたように思う。
初旅
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それだけの
前古
(
ぜんこ
)
未曾有
(
みぞう
)
の大成功を収め得た八人は、
上
(
のぼ
)
りにくらべてはなお一倍おそろしい氷雪の危険の路を用心深く
辿
(
たど
)
りましたのです。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その夜、奥の院に
仏法僧鳥
(
ぶつぽふそう
)
の
啼
(
な
)
くのを聴きに行つた。夕食を済まし、小さい
提灯
(
ちやうちん
)
を借りて今日の午後に
往反
(
わうへん
)
したところを
辿
(
たど
)
つて行つた。
仏法僧鳥
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
山のなかの神々しい湖水、山の人々の生活、そして人生のある道すじを
辿
(
たど
)
ってる種々の青年とその個性の運命などを感じて読みました。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
温室の間を抜けて、露天食堂になつてゐる庭の一隅に
辿
(
たど
)
りつき、片手の甲を、熱くほてつた頬にあてゝ、大きな溜息をつきました。
けむり(ラヂオ物語)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
新道
(
しんだう
)
は
春日野峠
(
かすがのたうげ
)
、
大良
(
だいら
)
、
大日枝
(
おほひだ
)
の
絶所
(
ぜつしよ
)
で、
其
(
そ
)
の
敦賀
(
つるが
)
金
(
かね
)
ヶ
崎
(
さき
)
まで、これを
金澤
(
かなざは
)
から
辿
(
たど
)
つて
三十八里
(
さんじふはちり
)
である。
蟹
(
かに
)
が
歩行
(
ある
)
けば
三年
(
さんねん
)
かゝる。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
半月前に
辿
(
たど
)
って来たその同じ道を南へ取って一日も早くもとの
居延塞
(
きょえんさい
)
(それとて千数百里離れているが)に入ろうとしたのである。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
この間を縫うて四人は一歩一歩
辿
(
たど
)
った。ちょうど中頃の最も崩壊の甚だしい処に至ると、
頭上
(
とうじょう
)
唸
(
うな
)
りを生じて一大石塊が地に
陥
(
お
)
ちた。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
いや、それだけではすまされないのだ。そういう筋道を
辿
(
たど
)
って
究
(
きわ
)
めて行けば、思想の開顕という概念が得られそうに思うからだね。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
ここからの陸路を左に取れば、おのずからサッポロに
辿
(
たど
)
りつく。人馬の往来も目立つようであった。官用の
路
(
みち
)
は踏みかためられていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
喘
(
あえ
)
ぎ/\車の
際
(
きわ
)
まで
辿
(
たど
)
り着くと、
雑色
(
ぞうしき
)
や
舎人
(
とねり
)
たちが手に/\かざす
松明
(
たいまつ
)
の火のゆらめく中で定国や菅根やその他の人々が力を添え
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その時々の環境やら出来事やらの連絡を
辿
(
たど
)
り、過去がだんだんはっきりした形で見えるようになったのは、ついこのごろのことで
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あなたはあなたの
路
(
みち
)
を別々に
辿
(
たど
)
られたのも致方は無いものゝ、先生が肉の
衣
(
ころも
)
を脱がれた今日、私は金婚式でも
金剛石婚式
(
こんごうせきこんしき
)
でもなく
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
けれども
件
(
くだん
)
の侍は、あたりの眺めに心をひかれるさまもなく、思いありげなふところ手で、肩を落して、なぎさを北へと
辿
(
たど
)
ってゆきます。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
湯元に
辿
(
たど
)
り着けば一人のおのこ袖をひかえていざ給え
善
(
よ
)
き宿まいらせんという。引かるるままに行けばいとむさくろしき家なり。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
山を越え川を渡り、谷峡を
辿
(
たど
)
る
嶮
(
けわ
)
しい旅路を続けて、飯田城下も
空
(
むな
)
しく過ぎ、赤穂という小さな駅に泊ったときのことであった。
足軽奉公
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
野路を
辿
(
たど
)
りて、我れ草花の香を
嗅
(
か
)
げば、この帽子も
亦
(
また
)
、共にその香に酔ひたる日もありき。価安かりけれど、よく風流を解したる奴なり。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
その夜甚太郎の泊まったのは笛吹川の川畔の
下向山
(
したむきやま
)
の
駅路
(
うまやじ
)
であったが、翌日は早く発足し滝川街道を古関の方へ例の調子で
辿
(
たど
)
って行った。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
少年が母をたずねて、この浜辺までひとりで
辿
(
たど
)
って来た情熱を考えると、泣き出したいだろうお君さんの気持ちが胸に響くなり。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
時間と空間のあらん限りを馳けめぐって、脳髄の正体を突止めて行ったポカンの苦心惨憺の
蹤跡
(
あと
)
をモウ一度くり返して
辿
(
たど
)
ってみるがいい。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
切髪は乱れ
逆竪
(
さかだ
)
ちて、
披払
(
はたはた
)
と
飄
(
ひるがへ
)
る
裾袂
(
すそたもと
)
に
靡
(
なびか
)
されつつ
漂
(
ただよは
)
しげに行きつ留りつ、町の南側を
辿
(
たど
)
り辿りて、鰐淵が住へる横町に
入
(
い
)
りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ホテルの門に
辿
(
たど
)
り着いたときにも、長い道を
馳
(
か
)
け続けたために、身体こそやゝ疲れていたものの、彼の
憤怒
(
ふんぬ
)
は少しも緩んではいなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
悉
(
ことごと
)
く水田地帯で、陸羽国境の
山巒
(
さんらん
)
地方から
山襞
(
やまひだ
)
を
辿
(
たど
)
って流れ出して来た荒雄川が、南方の丘陵に沿うて耕地を
潤
(
うるお
)
し去っている。
荒雄川のほとり
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そして、それに深く疲れる時いつも頭を休めに行つたのは、家から寂しい
草原
(
くさはら
)
の
小徑
(
こみち
)
を五六町
辿
(
たど
)
る海岸の
砂丘
(
さきう
)
の上へであつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
夕日を仰いで、
田圃
(
たんぼ
)
の中の一筋道を
辿
(
たど
)
りながらも、彼は幾度か後を振返ろうとして、そのたびにようようの思いで喰いとめた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
私
(
わたくし
)
としてはせいぜい
古
(
ふる
)
い
記憶
(
きおく
)
を
辿
(
たど
)
り、
自分
(
じぶん
)
の
知
(
し
)
っていること、
又
(
また
)
自分
(
じぶん
)
の
感
(
かん
)
じたままを、
作
(
つく
)
らず、
飾
(
かざ
)
らず、
素直
(
すなお
)
に
申述
(
もうしの
)
べることにいたします。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
彼は、畑と畑との間を
辿
(
たど
)
って進んだ。
河骨
(
こうほね
)
などの咲いている小流れへ出た。それに添うて三四町行くと、そこに巾の狭い木橋が
架
(
かか
)
っていた。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
やがてまた戻って来ると、
膝
(
ひざ
)
で絞め殺されそうなのもものともせず、無理やり私たちの囲みを押し破って、とうとう
煖炉
(
だんろ
)
の一角に
辿
(
たど
)
り着く。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
岩とつづいて
稜角
(
リッジ
)
がプラットホームのように長い、甲府平原から仰いだ、硬い角度の、
空線
(
スカイライン
)
の、どれかの端を
辿
(
たど
)
っているのだ、何万という
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
こんなことを言いながら、橋板の上の血痕をよくよく
辿
(
たど
)
って見ると、その一筋が、平右衛門町から第六天の方へ向いています。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そうして、森のほうにつづいた
畦道
(
あぜみち
)
を僕は独りで
辿
(
たど
)
って行った。考えごとをつづけながら。時おり、その
俯
(
うつ
)
むいた首を悲しげに振りながら。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
死んで暗い道を
独
(
ひと
)
りでとぼとぼ
辿
(
たど
)
って行きながら思わず『マサカ
死
(
しの
)
うとは思わなかった!』と叫びました。全くです、全く僕は叫びました。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
行手にもまたほかの町が見えていたが、平馬はべつにそこへ行くためにこの春の野の一本道を
辿
(
たど
)
っているわけではなかった。
平馬と鶯
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
わが家に
辿
(
たど
)
りついて、机の上の燈火をつけると、その
火影
(
ほかげ
)
もまた昨夜とは違い、にわかに清く澄んでいるような心持がする。
虫の声
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それこそ俗論だ。妾宅こそは男子の風流生活の深奥に光っている、究極の実在だ。男子たる者はそこに
辿
(
たど
)
りつくことによって、その風流生活を
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
『來月の
六日
(
むいか
)
だすがな。』と、お
光
(
みつ
)
も
先刻
(
さつき
)
から昔の祭の日の記憶を
辿
(
たど
)
つて、さま/″\の
追懷
(
つゐくわい
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐたらしく思はれた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
辿
(
たど
)
ってゆくと、この中の第二景「大阪
道頓堀
(
どうとんぼり
)
」のところで例の三人のうち、紅黄世子だけが他の二人に別れて出演するのだ。
間諜座事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
どこを、どう
辿
(
たど
)
ったのかまるで夢中でサン・フロランタンの「
旅館・金の鶏
(
オテル・コックドル
)
」というのにころげこんだのは九時近く。二人は九死一生の思い。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
辿
漢検準1級
部首:⾡
7画
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