)” の例文
たちまち、チクリと右の手の甲が痛み出した。見ると毒虫にいつの間にやらされていた。駕龍の中にはたえなる名香さえ焚いてあるのだ。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「さう言つたつて、これでものみしたあとよりはでかいでせう。——一體そんなことを言ふ親分こそ身體を汚したことがありますかい」
そしてきつとすでせう。蜘蛛はそれを勘づきます。で、自分の糸嚢から糸をひき出して、大急ぎで蜂の上に糸をひつぱりまはします。
妓女四散遊戯して側にあらず、樹下の穴より毒蛇出て王をさんとすると、樹上より鼠下り来りて鳴くごとに蛇が穴に退き入った。
「細君」と「丸善」とは学校教員が住むでる世界の二大人格だが、蚤は昨夜ゆうべ二人ともそれにされて、とうと寝付かれなかつたからだ。
黒犬にももまれて驚いたなどという下らない夢を見る人は、めていても、のみの目をされて騒ぐくらいの下らない人なのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『今昔物語』に蜂と蜘蛛くもと戦う話があった。一たび蜘蛛のとりこになったのを人に助けられた蜂が、仲間をもよおして蜘蛛をしに来る。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
四条大橋を渡るとき、顔にぶつかった蚊もどきと呼ぶさぬ蚊(?)が、いかにも力なくなっているのを掌の上にのせて見た。
幽霊を見る人を見る (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
夢の中でも、私は、強情な植物共のつるを引張り、蕁麻いらくさとげに悩まされ、シトロンの針に突かれ、蜂には火の様にされ続ける。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「蝎いい虫じゃないよ。僕博物館でアルコールにつけてあるの見た。尾にこんなかぎがあってそれでされると死ぬって先生が云ったよ。」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
最後にその蜂がぶんぶんと飛び出して、殿さまや家来けらいしたので、もうこらえてくれとあやまった、などという笑いの結末にもなっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
自分は三千代を、平岡に対して、それだけ罪のあるひとにして仕舞つたと代助は考へた。けれどもそれは左程に代助の良心をすには至らなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左の肘を衝く。上瞼うはまぶたが重くなる。八は寝てはならないと思ふのと、蚊にされるのとで、ふさがる目を強ひてく。上瞼が又重くなる。又強ひて目を開く。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
蝮蛇ふくだ手をせば壮士おのが腕を断つ」それを声をたてて云い、彼はふと自分の腕を見まわした。目をつぶると腕を斬るいたみが伝わって来るようであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
それで、蛇はひがんで、のたのた這い廻るし、かえるはがあがあ騒ぐのだし、蜂はぶんぶん腹立ちまぎれにしに来るし、狼や獅子は、鋭い牙を研ぎ出したのだよ。
トシオの見たもの (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
娘の眼はその瞬間にやさしいるさを、その可愛げな頬ににっとうかべた。——眠元朗はちくりと胸をされたような気がした。かるい不快が伴うた気分だった。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
蚊にされたあとのある手の甲で額の汗をき拭き、ぐっと腰の蝶番ちょうつがいを伸ばしながら身をらした。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かの人をしてはほのほに入り、一たびは烟となれど、又「フヨニツクス」(自らけて後、再び灰より生るゝ怪鳥)の如く生れ出でゝ、毒を吐き人をやぶるといふ蛇のはりをば
私はある騎兵が右手の小指を蝎にされて、すぐに剣をぬいてその小指を切断したのを見た。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ぶよす、蚋が螫すわ。どうじゃ、歩き出そうでないか。たまらん、こりゃ、立っとッちゃあらち明かん、さあさきね、貴公。美人は真中まんなかよ、わし殿しんがりを打つじゃ、早うせい。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
声も立てないで触れるとすぐす藪蚊、蠅は殆んどいないけれども、街へ出かけるときっと二三匹ついてくる。たまたま誰か来てくれると、意識しないお土産として連れてくる。
草と虫とそして (新字新仮名) / 種田山頭火(著)
常に鋭く尻を押つ立てて歩くやゝ小さな黒蟻は好んで人をし、またこれに螫されると必ず二三日脹れて痛かつた。これ等のほかに、長さ一分ほどのほつそりした赤黒い蟻がゐた。
座敷ざしきの前をはちが一疋歩いて行く。両羽りょうはねをつまんでも、そうともせぬ。何に弱ってか、彼はぶ力ももたぬのである。そっと地に下ろしたら、また芝生の方へそろ/\歩いて行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その癖おそろしく素敏すばしっこい昆虫むしめが、とても我慢が出来ないほどチクチクと彼のからだすものだから、手を一杯にひろげて彼は螫された箇所ところをポリポリ掻きむしりながら、思わず
……内閣が代ろうが戦争が初まろうが、大地震が初まろうが、大火事になろうが、又は、暑かろうが寒かろうが、頭に蜂がそうが、尻に火が付こうが、頓着しているひまは無いのだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その時セルギウスはまむしされたやうな気がした。娘の顔を見た時、白痴で色慾の強い女だと感じたのである。セルギウスは立ち上つて庵室に這入つた。娘はベンチに掛けて待つてゐた。
さそりが石の下にもぐり込んで気違いのようになって物をしたがっている時にでも、ラザルスは太陽のひかりを浴びたまま坐って動かず、灌木のような異様な髯の生えている紫色の顔を仰向けて
誰もされない人はない、大樺池おおかんばいけを直ぐ眼の下に見て、ひたりに下る。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
泣面なきつらに蜂 がすというような目ばかり見ましたが、これからとてもなおなおどういう難儀があるかわからん。けれどもまず進むだけ進むのが真に愉快であるという考えから一首の歌をみました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ただまるまるふとったほおにいつも微笑びしょうを浮かべている。奉天ほうてんから北京ペキンへ来る途中、寝台車の南京虫なんきんむしされた時のほかはいつも微笑を浮かべている。しかももう今は南京虫に二度とされる心配はない。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ア、怒ってる——すぞ螫すぞ」
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ちくちくされる、かじられる。
藪蚊やぶかしてもてばかり。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
悪い星されてる。
蜂にされた時
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
大きさ柱のごとくしてたけただ二尺余、その行くや跳び躍る、逢々として声あり、人をし立ちどころに死す〉とあると同物だろうという。
芸人といふものは、罪のないもので、夫婦めをと喧嘩をしたり、批評家とか蜂とかにされたりすると、直ぐに師匠のとこに駈けつけようとする。
眼はただ一人助かったなれど、その代り右の手の甲を毒虫にされたので、それがいつまでも痛痒いたがゆくて何んとしても耐えられぬのであった。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
さそりいい虫じゃないよ。ぼく博物館はくぶつかんでアルコールにつけてあるの見た。にこんなかぎがあってそれでされるとぬって先生がってたよ」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
蜂の卵を食うのは蛆その物を食うのであるが、嫌がらぬ段になれば高い価を払ったり、または蜂にされなどしてもその品を得て喜んで居る。
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「これから覗いてみようと思うんだが、のみしたほどでもいいから、身体に文身のない者は入れないことになっている」
自分は三千代を、平岡に対して、それだけ罪のある人にしてしまったと代助は考えた。けれどもそれはさ程に代助の良心をすには至らなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんな時には自分の咽から鼾が出さうになるのと、蚊がひどくすのとで、びつくりして目を開くのである。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
蜂の方が頭とすれすれに馳つて來たり、肩先を越えたりして却つてされないのである。
めたん子伝 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
佐賀県東松浦郡の山村に於て、同じ二十日を蜂の養生というのも、蜂のためにはちっとも養生ではなくて、かえって一年中蜂にされても負けないようにというまじないかと思われる。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
お手が障った所だけはしましても痛みませぬ、竹箒たけぼうき引払ひっぱたいては八方へ散らばって体中にたかられてはそれはしのげませぬ即死そくしでございますがと、微笑ほほえんで控える手で無理に握ってもらい
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
刻んだ菜や、水を与えられると、籠の目を透くレモン色の小さい姿が激しく動くのが見え、田舎家の午前の無言しじまの静けさは銀の蚤でもすように急に品よく可愛らしくざわめき立ちました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
昨日は庭で青白い螟蛉あおむし褐色かちいろのフウ虫二疋でし殺して吸うて居るのを見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その幾万匹が一度に群がって賊をしたので、かれらも狼狽した。ある者は体じゅうを螫され、ある者は眼を突きつぶされ、初めに掠奪した獲物をもみな打ち捨てて、転げまわって逃げ去った。
一度も二度も今朝がたから私をして逃げて行つたそれである。