砂利じゃり)” の例文
異人館の丘の崖端がけはしから川を見下ろすと、昼間見る川はにぎやかだつた。河原の砂利じゃりに低く葭簾よしずの屋根を並べて、遊び茶屋が出来てゐた。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
ハッと思った途端に、私はこの時初めて、れと我心わがこころに帰って、気が付いてみると、そんな砂利じゃりの上に、横ざまに倒されている。
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
子供こどもたちは、んである砂利じゃりうえのぼったり、ばこうえにすわったりして、紙芝居かみしばいのおじさんをいていました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
海の中にもぐった時に聞こえる波打ちぎわの砂利じゃりの相摩する音や、火山の火口の奥から聞こえて来るかまのたぎるような音なども思い出す。
ねずみと猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「さあ、しかしあのコングロメレートという方は前にただの砂利じゃりだったころはほんとうに空が茶いろだったかも知れませんね。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
古藤はしゃちこった軍隊式の立礼をして、さくさくと砂利じゃりの上にくつの音を立てながら、夕闇ゆうやみの催した杉森すぎもりの下道のほうへと消えて行った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しかもその異物は、砂利じゃりであろうとガラスのかけらであろうと、とにかく形があるものでありさえすれば何でもいいのです。
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
ずう躰が大きくて、あるきぶりがゆうゆうとしているから、たとえ砂利じゃりトラの運転手でも眼をひかれずにはいられないのだ。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ただ大きな松や桜を植えてそのあいだに砂利じゃりを敷いた広い道をつけたばかりであるが、手を入れすぎていないだけに、見ていて心持ちがいい。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
砂利じゃりや石ころが、ごろごろしている道をえらんで走った。透明人間との間が少しはなれた。やっと、町の入口に走りついた。
いちばんいいところでも、岩の上にねんどやおもたい砂利じゃりがあるくらいのもので、とにかく、見るからにひんじゃくだった。
はだしのまま、砂利じゃりの多いこの道をけて通学させられた小学生のころの自分を、急になまなましく彼は思い出した。あれは、戦争の末期だった。
夏の葬列 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
こういえば、白洲しらす砂利じゃりを掴んでまでも、徳松の無実を言い立てようという、勇気のある篤志家とくしかは容易に出ないでしょう。
それでからもう砂利じゃりでも針でもあれとつちへこすりつけて、十余りも蛭の死骸しがいひっくりかえした上から、五六けん向うへ飛んで身顫みぶるいをして突立つッたった。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ヘンゼルは、かがんで、その砂利じゃりを、うわぎのかくしいっぱい、つまるだけつめました。それから、そっとまた、もどって行って、グレーテルに
私たちは、家の前の石段から坂の下の通りへ出、がけのように勾配こうばいの急なみちについてその細い坂をのぼった。砂利じゃりが敷いてあってよけいに歩きにくい。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「どうも汽車ってものは恐ろしくはやいものだ。まるで飛ぶようだ。電信柱はとんで来るように見え、砂利じゃりしまに見える」などきもをつぶして話されました。
そして大抵は先に来て、青いベンチの前の砂利じゃりにパラソルのさきで何かの形を描きながら、しかも注意ぶかくあたりを警戒してゐるらしい彼女を発見した。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
大砲も欠伸あくびをするかも知れない。彼は大砲の下に腰を下した。それから二本目の巻煙草へ火をつけた。もう車廻しの砂利じゃりの上には蜥蜴とかげが一匹光っている。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
海から打ちあげられた砂利じゃりで道はうずまり、とうてい自転車などとおれそうもないほど荒れているのだ。まるで、よその村へきたような変りかただった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
砂利じゃりや瓦や川土かわつちを積み上げた物蔭にはきまって牛飯ぎゅうめしやすいとんの露店が出ている。時には氷屋も荷をおろしている。
砂利じゃりの積みかさなったあいだで、ろばが緑の月桂樹げっけいじゅかきの上を歩いて、やせたアザミを喜んで食べています。
その他土や砂利じゃりなどを背ではこぶ木の箱の、立っていてふたの綱をひき、なかの物をあけるしかけなども、だれがかんがえ出したのか、このごろは始まっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
二人はおたがいに助けあって、鉄柵てっさくを飛び越えました。下は湿しめっぽい土が砂利じゃりんでいました。私はツルリと滑って尻餅しりもちをつきましたが、直ぐにまた起上りました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おあいは、洗足するとき、夫の草鞋わらじがすり切れて、足袋の裏まで砂利じゃり擦れがしているのを見た。
(新字新仮名) / 室生犀星(著)
何かを生じさせたのみならず(当時そのことで私は随分二人を憎悪した)今もなお砂利じゃりみたいなものを一つでものこしている、或はいたことでは平然とした気分ではありません。
私はほっと一息ついて砂利じゃりの上にたおれた。焼けつく熱さにも私は何の感じもしなかった。
砂利じゃり玉石たまいしは玉川最寄もよりから来るが、沢庵たくあん重石おもし以上は上流青梅あおめ方角から来る。一貫目一銭五厘の相場そうばだ。えらんだ石をはかりにかけさせて居たら、土方体どかたていの男が通りかゝって眼をみは
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
客車の戸を開閉あけたてする音、プラットフォームの砂利じゃり踏みにじりて駅夫の「山科、山科」と叫び過ぐる声かなたに聞こゆるとともに、汽笛鳴りてこなたの列車はおもむろに動き初めぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
砂利じゃり車のあと押しをして、熱い熱い日の下に働いていたが、ふとはげしい眩惑げんわくを感じて地に倒れ、たすけられて自分の小屋に送り込まれてからは、いかな丈夫な身体からだもどうすることもできず
ネギ一束 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
浜べには、貝が砂利じゃりのようにうちあげられていた。名も知らぬ幾百種類の貝は、大博物館の標本室いじょうである。そして貝類も食用にした。ウニ、タカセ貝、チョウ貝などをよくたべた。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
しかし墓地へゆく道のほうは、砂利じゃりがあっさり撒いてあるので、踏み心地のよい歩道のような体裁になっている。雑草と野花でいっぱいの、狭い乾いた溝が、この両方の道の間を通っている。
次郎の十本の指は、直吉の耳朶をつかんだままだったが、彼の体の重みを支えるには少し弱すぎたらしく、次の瞬間には、彼の体は、砂利じゃりで固まった路の上に、ほとんどまっさかさまに落っこちた。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「もう二度と、白洲しらす砂利じゃりみたくねえ」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「——海にちけえところはこまっけえ砂さ、それが上へのぼるにつれて、砂利じゃりになり石ころになり、その石ころがもっと大きくなってるもんだ」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ですからもしもこのあまがわがほんとうに川だと考えるなら、その一つ一つの小さな星はみんなその川のそこの砂や砂利じゃりつぶにもあたるわけです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
川が直接この美しい珠玉を運んで来るわけではないのだが川は山をくずして岩にし岩を崩して石にし石をくだいて砂利じゃりにし砂利をふるって土にする。
さくらんぼ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
店とはいっても葦簾囲よしずがこいの中に縁台が四つ五つぐらい河原の砂利じゃりの上に並べてあるだけで、天井は星の降る夜空である。
涼味数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
吉左衛門はそれをきッかけに、砂利じゃりで堅めた土間を通って、宿役人の詰め所の上がりはなの方へ行って腰掛けた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのくぼ地には砂利じゃりしかありませんでしたが、カラスたちは、そんなことぐらいで満足まんぞくすることができません。
わたしは憂鬱ゆううつになって来ると、下宿の裏から土手どての上にあがり、省線電車の線路を見おろしたりした。線路は油や金錆かなさびに染った砂利じゃりの上に何本も光っていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
簪は下に落ちて、砂利じゃりの上にチャリンと鳴ると、怪しの女はお六を突き飛ばしてサッと五六歩、闇の中へ。
ふたりは、これをしおに、ここをはなれ、道普請みちぶしん砂利じゃりがつんであるほうへ、あるいていきました。
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
「御帰りいっ」と云う声が玄関に響くと、砂利じゃりきしる車輪がはたと行き留まった。ふすまを開ける音がする。小走りに廊下を伝う足音がする。張り詰めた二人の姿勢はくずれた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、なおの事だ。今更ながら、一同のあきれたところを、ひさしまたいでさかしまのぞいてねらつた愚僧だ。つむじ風をどっと吹かせ、白洲しらす砂利じゃりをから/\と掻廻かきまわいて、パツと一斉に灯を消した。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そこには、砂利じゃり取り場があって、わたしたちは、その中を歩きまわって、土をかきまわしたものですよ。それから、青キャベツの畑にはいることも、ゆるしてもらいましたよ。
砂利じゃりを踏む音が聞えた。エプロンをかけた若い女が、迎えに来た。仏は、その女の顔を見たとき、もちっとでっと叫ぶところだった。その女も、おどろいて、思わず足を停めた。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一歩二歩ひとあしふたあしとだんだん路地の中へ進み入ると、たちまち雨だれか何かの泥濘ぬかるみへぐっすり片足を踏み込み、驚いて立戻り、魚屋の軒燈けんとうをたよりに半靴はんぐつのどろを砂利じゃり溝板どぶいたへなすりつけている。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
然しいつまで川水を汲んでばかりも居られぬので、一月ばかりして大仕掛おおじかけ井浚いどさらえをすることにした。赤土あかつちからヘナ、ヘナから砂利じゃりと、一じょうも掘って、無色透明無臭而して無味の水が出た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「——海にちけえところはこまっけえ砂さ、それが上へのぼるにつれて、砂利じゃりになり石ころになり、その石ころがもっと大きくなってるもんだ」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)