“盲(し)” の例文
春琴の顔のありかと思われる仄白(ほのじろ)い円光の射して来る方へ盲(し)いた眼を向けるとよくも決心してくれました嬉(うれ)しゅう思うぞえ
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼等が人々を折檻(せつかん)する時に、人々は無上の快楽を感ずるなり、我眼(わがめ)曇れるか、彼等の眼盲(し)ひたる乎(か)、之を断ずる者は誰ぞ。
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
草ごめや蛙(かはづ)のこゑの、夜に聴けばくくくとふくむ。おもしろよ盲目(めしひ)の蛙、かいろ、くく、暗しとを啼く。盲(し)ひぬ盲(し)ひぬ、くくく。惜しや惜しや、くくく。
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
目の盲(し)ひたお婆さんは、車に乗ると眼が眩(まは)ると言ふので、昔御国替(おくにが)への時乗つて来たやうな軽尻馬(からしりうま)をわざわざ仕立てゝ、町の通をほつくり/\と遣(や)つて来た。
朝 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
という声濁りて、痘痕(とうこん)の充(み)てる頬骨(ほおぼね)高き老顔の酒気を帯びたるに、一眼の盲(し)いたるがいとものすごきものとなりて、拉(とりひし)ぐばかり力を籠(こ)めて、お香の肩を掴(つか)み動かし
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
眼盲(し)いたるに如何でかかる山の上にはあるならんと疑いつ、呼び入れて問いただすに、秩父に生れ秩父に老いたるものの事とて世はなれたる山の上を憂しともせず
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
目の白く盲(し)ひたる群(むれ)の争ひて走るが如きイザル川かな
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
これや我が目の俄(には)かにも盲(し)ひしならめ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
目(め)こそ盲(し)ひぬれ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫、薄田淳介(著)
たとえば己(おの)が目は盲(し)いたるに、少年の眼(まなこ)は秋の水のごとく、清く澄んで星のごとく輝くのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
七十近い禿頭(はげあたま)の老爺(らうや)が傍(そば)に小さく坐つて居る六十五六の目のひたと盲(し)ひた老婆にかう言ふと
朝 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
だがそうとばかりも思えないのは、そんな場合に何かしら別なことを考えながら遠い所へ心を馳(は)せているような様子が見えて、とき/″\ぽたりと、盲(し)いた眼から涙を落すことがあった。一度娘は
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのごとも盲(し)ふる子が眼を乞ひ祷(の)むと手触(たふ)りなげかす父は子が眼を
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
目の盲(し)ひたれば、手探りに
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
東京に行つて、知らぬ土地の土になるのは厭(いや)だ! かう目の盲(し)ひた婆さんは言つた。
朝 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
三味線背負(しょ)つた乞食坊主が、引掻(ひっか)くやうにもぞ/\と肩を揺(ゆす)ると、一眼(いちがん)ひたと盲(し)ひた、眇(めっかち)の青ぶくれの面(かお)を向けて、恁(こ)う、引傾(ひっかたが)つて、熟(じっ)と紫玉の其の状(さま)を視(み)ると、肩を抽(ぬ)いた杖(つえ)の尖(さき)が
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
我が観るはむしろ用なしけだしただ盲(し)ひつつくらき眼にぞ堪へゐむ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
或る時は狂いつゝ、遂に一生かのおん方の幻影を盲(し)いた眼から消すことが出来ず、迷いに迷って塚守(つかもり)になったいきさつを、もっと委(くわ)しく書き記したいのであるが、それらはいずれ「聞書後抄」と題し
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
引掻(ひっか)くようにもぞもぞと肩を揺(ゆす)ると、一眼ひたと盲(し)いた、眇(めっかち)の青ぶくれの面(かお)を向けて、こう、引傾(ひっかたが)って、熟(じっ)と紫玉のその状(さま)を視ると、肩を抽(ぬ)いた杖(つえ)の尖(さき)が、一度胸へ引込(ひっこ)んで、前屈(まえかが)みに
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目は盲(し)ひて笑(ゑまひ)かすかにおはすなり月のひかりの照らす面白(おもじろ)
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
と女(むすめ)の顔を瞻(みまも)れる、一眼盲(し)いて片眼(へんがん)鋭し。女はギックリとしたる様(さま)なり。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目は盲(し)ひて笑(ゑまひ)かすかにおはすなり月のひかりの照らす面白(おもじろ)
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
眉が薄く、鼻がひしゃげて、ソレその唇の厚い事、おまけに頬骨がギシと出て、歯を噛(か)むとガチガチと鳴りそう。左の一眼べとりと盲(し)い、右が白眼(しろまなこ)で、ぐるりと飜(かえ)った、しかも一面、念入の黒痘瘡(くろあばた)だ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
濃霧(のうむ)はそそぐ……いつしかに虫も盲(し)ひつつ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
頬は太(いた)く痩(こ)けて、眼(まなこ)は窅然(がっくり)と陥(くぼ)みて盲(し)いたり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あはれ、盲(し)ひたる白き目に花とりあてて
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そがうへに瞳(ひとみ)盲(し)ひたる嬰児(みどりご)ぞ戯れあそぶ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たゆらに嘆(なげ)き、白蝋(はくらふ)の盲(し)ひゆく涙。——
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)