時日じじつ)” の例文
「そちがさぐってきた、若君わかぎみのご異変いへん、また都田川みやこだがわ刑場けいじょうでおこなわれる時日じじつ、かならずまちがいのないことであろうな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを見これをきゝて、雪のとほからざるをしる。年の寒暖かんだんにつれて時日じじつはさだかならねど、たけまはり・どうなりは秋の彼岸ひがん前後ぜんごにあり、毎年まいねんかくのごとし。
けれども、時日じじつを経過するに従つて、肝癪が何時いつとなく薄らいできて、次第に自分のあたまが、周囲の空気と融和する様になつた。又成るべくは、融和する様につとめた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そののちさいわつきばかりは何の変事もおこらなかった、がさすがにその当座は夜分便所に行く事だけは出来なかった、そのうち時日じじつったし職務上種々しゅじゅな事があったので
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
たうたかさ三じやくすん三尖方形さんせんほうけい大理石だいりせきで、そのなめらかなる表面ひやうめんには「大日本帝國新領地朝日島だいにつぽんていこくしんりようちあさひとう」なる十一ふかきざまれて、たふ裏面うらには、發見はつけん時日じじつと、發見者はつけんしや櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさとが
つまり、かなりの時日じじつをかけないと、おわかりになれないと思うのです。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
ソコデ出来ることならほかの処も写したいといったが時日じじつが許さない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
時日じじつせまれると、検束なき読書法が、当時の余をして、茫然ぼうぜんと自失せしめたる外に、余を促がして、在来の軌道外に逸せしめたる他の原因あり。余は少時好んで漢籍を学びたり。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はじめて奧樣おくさま日出雄樣ひでをさまが、日本にほんへおかへりになるとうけたまはつたとき本當ほんたう魂消たまぎえましたよ、しかしそれは致方いたしかたもありませんが、其後そのゝちよくうけたまはると、御出帆ごしゆつぱん時日じじつときもあらうに、今夜こんやの十一はん……。
むかし數學すうがくすきで、隨分ずゐぶんつた幾何きか問題もんだいを、あたまなか明暸めいれうにしてだけ根氣こんきがあつたことおもすと、時日じじつわりには非常ひじやうはげしくこの變化へんくわ自分じぶんにもおそろしくうつつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれ此間このあひだにも安井やすゐ約束やくそくのあることわすれなかつた。うちかへつた當座たうざは、まだ二ヶげつさきことだからとゆつくりかまへてゐたが、段々だん/\時日じじつせまるにしたがつて、安井やすゐ消息せうそくになつてきた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今から十日以内に阪地はんちで落ち合おう、そうしていっしょに高野こうや登りをやろう、もし時日じじつが許すなら、伊勢から名古屋へまわろう、と取りきめた時、どっちも指定すべき場所をもたないので
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今日こんにちまで經過けいくわからして、すべての創口きずぐち癒合ゆがふするものは時日じじつであるといふ格言かくげんを、かれ自家じか經驗けいけんからして、ふかむねきざけてゐた。それが一昨日をとゝひばんにすつかりくづれたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)