支那人シナじん)” の例文
下等船客かとうせんきやくいち支那人シナじんはまだ伊太利イタリー領海りやうかいはなれぬ、ころよりくるしきやまひおかされてつひにカンデイアじまとセリゴじまとのあひだ死亡しぼうしたため
そこでうしろから背のびをしてのぞいて見ると、支那人シナじんばあさんが一人ひとり巡査の前でおいおい云ひながら泣いてゐた。もつとも支那人と云つても、今の支那人ではない。
饒舌 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼等は二三人の支那人シナじんを除けば、大抵は亜米利加アメリカ人か露西亜ロシア人だった。が、その中に青磁色せいじいろのガウンをひっかけた女が一人、誰よりも興奮してしゃべっていた。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それは興行こうげうのためにと香港ホンコンおもむかんとて、このふね乘組のりくんでつた伊太利イタリー曲馬師きよくばしとらおりやぶつてしたことで、船中せんちうかなへくがごとく、いか水夫すゐふさけ支那人シナじんまは婦人ふじんもあるといふさはぎで
事務室のまん中の大机には白い大掛児タアクワルを着た支那人シナじんが二人、差し向かいに帳簿をらべている。一人ひとりはまだ二十はたち前後であろう。もう一人はやや黄ばみかけた、長い口髭くちひげをはやしている。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
……支那人シナじんたる貴下のために、万斛ばんこくの同情無き能わず候。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)