愚図愚図ぐずぐず)” の例文
「とにかく、車に乗りたまえ。そんなところに愚図愚図ぐずぐずしているとまた風邪を引くよ」と、車の方へコン吉を押しやろうとする。
「東京市民は、愚図愚図ぐずぐずしていると、毒瓦斯で、全滅するぞ。兵営に、防毒マスクが、沢山貯蔵されているから、押駆けろッ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
愚図愚図ぐずぐずしてはいられぬから、我身わがみを笑いつけて、まず乗った。ひっかかるよう、きざが入れてあるのじゃから、気さえたしかなら足駄あしだでも歩行あるかれる。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
話はとうとう愚図愚図ぐずぐずになってしまった。そのうちに昏睡こんすいが来た。例の通り何も知らない母は、それをただの眠りと思い違えてかえって喜んだ。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの人の好さそうな乳母うばに聴いたら、詳しい事情がわかるだろうと思いましたが、この上愚図愚図ぐずぐずして居ると、恩を売るようで面白くありません。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
愚図愚図ぐずぐずすると面倒な国際問題にまでも引っかかって行きそうな形勢になって来たので、ジッとしておれなくなった。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ふふう、あの老人連中と来た日には、何と言えば集まって愚図愚図ぐずぐずいうのが好きなのじゃ。それだけのことじゃ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私はいつでも、まだ二十日もある、十日あると思いながら愚図愚図ぐずぐずしているうちに、ずるずると土壇場どたんばに追い込まれてしまうのがおきまりなのであった。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
何かにつけて緑雨は万年博士をののしって、愚図愚図ぐずぐずいやア万年泣拝という手紙を何本も発表してやるとりきんでいた。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
家を出る時でも、編上靴のように、永いこと玄関にしゃがんで愚図愚図ぐずぐずしている必要がない。すぽり、すぽりと足を突込んで、そのまますぐに出発できる。
服装に就いて (新字新仮名) / 太宰治(著)
愚図愚図ぐずぐずしている場合じゃない——そんな事もはっきり感じられた。彼はすぐに立ち上ると、真鍮しんちゅうの手すりに手を触れながら、どしどし梯子はしごを下りて行った。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「有難てえ。長引いたら、今度ばかりゃ、ほうぼうから集まって来るに違えねえから、愚図愚図ぐずぐずしちゃいられねえ仕事、兄貴が来ておくんなさりゃ、千人力だ」
「とにかく無事でよかった。愚図愚図ぐずぐずしていて又海嘯が来てやられてはつまらないし、火事もこっちが風下だから、何か持って行けるものだけ持って引上げよう。」
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「心配しないだっていいです。僕はどこまでもあなたと一緒に行きます。サア、愚図愚図ぐずぐずしている時じゃありません。逃げましょう。逃げられる所まで逃げましょう」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
刑罰もなく、咎めることもなく、叱られることもなく、五月蠅うるさ愚図愚図ぐずぐずいわれることもない。
いくら愚図愚図ぐずぐず云ったところでどうにもならんと云ったらならんのだから、と最後しまいには、焦立いらだたしそうに卓を叩いて、文句があるなら市長に云いたまえ、と云うのであった。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「何を愚図愚図ぐずぐず申しておるぞ!」長者は憎々しく怒鳴り立てた。「おとなしく各自めいめいへやへ帰って、鳰鳥の行くのを待つがいい! 鳰鳥の言葉はわしの言葉、決して抗弁はならぬぞよ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ことによると人跡未到の地かも知れぬ、よしそれなら私達が真先に蹈み込んでやろうというかんがえが心の中に閃めいた。しかし様子が知れないので愚図愚図ぐずぐずしている間に三年は過ぎて仕舞った。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
そのときわしははっとして、これは愚図愚図ぐずぐずしていられないとおもった。それから何年なんねんになるかれぬが、いまではすこ幽界ゆうかい修行しゅぎょうみ、あかるいところに一けん家屋かおくかまえてすまわしてもらっている……。
風がいてざわついた厭な日だったもの、釣れないだろうとは思ったがね、愚図愚図ぐずぐずしているとしかられるから、ハイと云って釣には出たけれども、どうしたって日が悪いのだもの、釣れやしないのさ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし愚図愚図ぐずぐずすることは許されない。係員を半分にわけ、一隊は芝浦港へ、一隊は横浜港へ。そして課長自身は信ずるところあって横浜へ——。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかも学校まではまだ五基米キロ以上あるのだから、愚図愚図ぐずぐずすると時間の余裕が無くなるかも知れない……だから俺はここに立佇たちどまって考えていたのだ。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
明治十七年、貴方がたがまだ生れない先、私は其所そこへ這入ったのです。それから——実は落第しております。落第して愚図愚図ぐずぐずしている内にこの学校が出来た。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「気が張っておりますから、大したことはございません、——でもいい按排あんばいでございました。今頃まで愚図愚図ぐずぐずしていたら、どんな事になったかわかりません」
畜生ちくしょう! まだ愚図愚図ぐずぐずしているな。これでもか? これでもか?」砂利は続けさまに飛んで来ました。中には白の耳のつけ根へ、血のにじむくらい当ったのもあります。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ほとんどあっけに取られる程であったが、兎も角愚図愚図ぐずぐずしている場合でないと思ったので、博士と共に、門前に待たせてあった警視庁の自動車に乗り込んで、U公園の科学陳列館へ走らせた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もし刑罰とすれば、めぐみしもとなさけむちだ。実際その罪を罰しようとするには、そのまま無事に置いて、平凡に愚図愚図ぐずぐず生存いきながらえさせて、しわだらけのばばにして、その娘を終らせるがいと、私は思う。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きのうは一日、家にいて「綴方つづりかた教室」を読了し、いろいろ考えて夜もなかなか眠られなかった。「綴方教室」の作者は、僕と同じとしなのだ。僕もまったく、愚図愚図ぐずぐずしては居られないと思ったのだ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
何を愚図愚図ぐずぐずしてるんだと、叱り飛ばす権幕だった。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
先生は直ぐ駈けつけて下さいましたけれど、あたくしが、愚図愚図ぐずぐずしているうちに、頭髪かみについていた硫酸らしいものが眼の中へ流れこんだのです。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
コック部屋に無けあ船長室に在る筈だ。そいつをぱらって来い。なぐられるもんか。愚図愚図ぐずぐずかしたら俺が命令いいつけたと云え。船長おやじには貸しがあるんだ。……行って来い……。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
よし主人が小供をつらまえて愚図愚図ぐずぐず理窟りくつね廻したって、落雲館の名誉には関係しない、こんなものを大人気おとなげもなく相手にする主人の恥辱ちじょくになるばかりだ。敵の考はこうであった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
愚図愚図ぐずぐずに一日一日延びていた。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
君江はそれを愚図愚図ぐずぐず云ったものだから、金はおこって、それじゃお前には今までのように薬をやらないぞといって、薬の制限で君江を黙らせようとしたのだ。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうだ、もう愚図愚図ぐずぐずはしていられないのだ。こんなに停頓することは、われわれの予定にはなかったことだ。そうだ、先刻さっき本国の参謀局から指令が来ていた。それを
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「オイ『赤毛』君。——しっかりするんだ。愚図愚図ぐずぐずしていると、俺達は死んでしまうぞ」
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そんなに愚図愚図ぐずぐず手間どっていると、この蠅は象のように大きくなってしまうことだろう。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
「よオし。愚図愚図ぐずぐずしていないで、その吸血鬼をとらえてやらねばならん」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そう、愚図愚図ぐずぐずしてられないわねエ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
愚図愚図ぐずぐずぬかすと、のしちまうぞ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)