吾人ごじん)” の例文
「いや、いや。そんなことはない。けだし、風病にかかって土になることはけだしすべて吾人ごじんに免かれないことですから。けだし。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
されど吾人ごじんにしてもしこの社会より貧乏を根絶せんと要するならば、これら三個の条件にかんがみてその方策をつるのほかはない。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
ことに吾人ごじんの最も光栄と致すのは、欧米諸国先進なる文明諸国の百有余の大学から祝辞を送られたのを衷心より感謝するのである。
早稲田大学の教旨 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
数千年来、数億の人々がかためてくれた、坦々たんたんたるたいらかな道である。吾人ごじんが母の胎内たいないにおいてすでに幾分か聞いて来た道である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それは丁度ちやうど日本にほん國號こくがう外人ぐわいじんなんなんかうとも、吾人ごじんかならつね日本にほん日本にほんかねばならぬのとおな理窟りくつである。(完)
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
吾人ごじんは時勢の概括的観察を為さざるべからず。しこうしてこれにさきだちて、さらにその淵原来歴をつまびらかにせざるべからざるの必要を感ず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そしてこれに続いて自然の認識の基礎となるべきものはしかし結局吾人ごじんの感覚にほかならないという感覚論的方法論の宣言がある。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
さてワーテルローのごとき種類の会戦において、何物よりも特に吾人ごじんの感嘆するところのものは、偶然が示した驚くべき巧妙さである。
故に吾人ごじんは、肉体なき霊魂を考え得ず、表現なき「詩の幽霊」を思惟しいし得ない。詩は表現があってのみ、始めて詩と言われるのである。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
よし物理学者の分子に対するごとき明暸めいりょうな知識が、吾人ごじんの内面生活を照らす機会が来たにしたところで、余の心はついに余の心である。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
吾人ごじんはこのごろの新聞紙上において実に面白き二個の広告を見当たりたり。一は「白縮緬ちりめん兵児帯へこおび」と題し、一は「徳用飯殖焚めしふやしたき法」と題せり。
面白き二個の広告 (新字新仮名) / 堺利彦(著)
吾人ごじんかれを愛することあたはず、いな愛すること能はざるにあらず、社会がこれを許さざるなり。愛することを得ざらしむるなり。
愛と婚姻 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
列車が軌道レールなき土地を進行するは明らかに不可能なり。したがっ吾人ごじんは、この「事実らしからぬこと」を次の三引込線に帰せんとするものなり。
吾人ごじんの感情をすてて、自然の美を求めよと教ふるものなり。しからば吾人歌を詠まんとして、先づ詠むべき趣向を考へざるべからず。云々。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
六、横浜着港の際深夜、船長私用にてサンパンをもって、水夫を使用して、上陸することに対して、吾人ごじんこれを拒絶すること。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
吾人ごじんに許されたるは、ピストルに非ず、機関銃に非ず、猟銃も制限いたずらにげんにして駄目、空気銃だけが許されている。
白銅貨の効用 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
吾人ごじんの世界では、何故に火星がこの暗黒星の為に、かくまで激しい信号を発するか、その理由さえ解せられぬ、ただ気長く分かる時を待つのみだ。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
築城試合ちくじょうじあいも、じっさいに縄取なわどりの早さでも腕競うでくらべしてくれればありがたいが、議論ぎろんだけでは吾人ごじんには少しむずかしぎてかたがはるぞ、という顔つき。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さるが故に今日こんにち吾人ごじんに対してもなほ永久なる恋愛の詩美を表現する好個こうこの象徴として映ずる事を妨げざるなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
従って吾人ごじんの眼前には何も浮んで来ず、文学的価値もすこぶる乏しいわけである。しかるに鴎外博士の『佐橋甚五郎』を読むと、中に次のような描写がある。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
燁子の事件はあくまで慨嘆すべきものか、あるいはかえって謳歌おうかすべきものか、吾人ごじんはこれを報道した責任として、ここにいささか批評を試みたい。(略)
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
吾人ごじんの想像以上なるべきか、これを探撿してもって世に紹介せんことは、あながち無益の挙にあらざるべし、よって予はここに寒中の登岳とうがくを勧誘せんと欲するにのぞ
また常子夫人の発見したる忍野氏の日記に徴するも、氏は常に奇怪なる恐迫観念を有したるが如し。然れども吾人ごじんの問わんと欲するは忍野氏の病名如何いかんにあらず。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
吾人ごじんが小過失を懺悔ざんげするは、他に大過失なき事を世人に信ぜしめんがためのみ。」——ラ・ロシフコオ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
吾人ごじんひそかにうれうらくは、昔国中の牢人ろうにんが競うて大阪城にせ集まった如く、いやしくも空中の音楽師の自由なる者の限り、ことごとく湖畔の白馬城に身を投じて
航空機械の創造等に比すべく、吾人ごじん人類の信仰なり生活なりを、根底よりくつがえすていのものであった。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
またその上に植物には紅白紫黄こうはくしおう、色とりどりの花が咲き、吾人ごじんの眼を楽しませることひととおりではない。だれもこの天からさずかった花を愛せぬものはあるまい。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
光線ノ発射ト色沢ノ映昭トハ吾人ごじんノ終身求メテマザル所ナリ。耳モまたこれニ同ク、響ト音トハ其常ニ欲スル所タリ。光ヲシテ絶無ナラシメバ聴覚ノ困弊果シテ如何いかん
呉秀三先生 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
万一、明日大地震が起って、直ちに吾人ごじんは穴居生活に移らねばならぬとあれば、私は直ちに賛成する。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
トルストイ、ツルゲネーフとう吾人ごじんひさしくこれけども、ドストイヱフスキーの著書ちよしよいたりては吾文界わがぶんかいこれ紹介せうかいするのこう不知庵フチアンおほしとはざるからず。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
生涯しょうがいのある時期においては、人は狂気沙汰ざたの小動物となって——(吾人ごじんも皆一度はそうであった)——あるいは自殺のうちに、あるいは見当たりしだいの異性の腕のなかに
天下を旅行する多くの人のために、吾人ごじんは一日も早く草津行赤馬車の全滅を祈るものである。
吾人ごじんをしてし罪過の定義を下さしめば、簡明にの如く謂はんと欲す。いは
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
……吾人ごじん結束せんとするや、彼等直ちにこれをさまたぐ、これを破る。我国社会運動の遅々ちちとして進まざる、すなわち此の無政府党あるに依る。実に彼等は社会主義の仇敵きゅうてきなり、人類の仇敵なり。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
吾人ごじんはその活動の結果を、明日の本紙上に報道し得べき事を信じて疑わざるなり
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これがまた失敗であった。これまたよき引っ込みのチャンスを逸して遺憾であった。実をいうとこの再興行に際しても、吾人ごじんは翁のために同情を繰り返し同時に苦笑を噛み殺したのである。
吾人ごじんは吉凶共に、天地万有の天朝の恢復かいふくたすけ、しかし胡虜こりょを滅絶する所の真の命令を待つ。吾人はつつしんで天帝地皇、山河上穀の霊、六悪の霊、五方の五竜の霊、及び無辺際むへんさいの全神霊を拝す。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
吾人ごじんは、右に就いて、明治以来、錚々そうそうたる学者博士の意見を読みました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
新湖しんこのこととて、だ生々しいところが、往々おうおうにして見える、船頭の指すがままに眺めると、その当時までは、村の西にあって、幾階段かを上ったという、村の鎮守の八幡のやしろも、今吾人ごじんの眼には
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
吾人ごじんすべからく現代を超越せざるべからず……か。仁丹じんたんの広告見たいだね。樗牛ちょぎゅうという人は自家広告が上手だった丈けに景色の好いところへ持って来たよ。何だか物欲しそうで一向超越していない」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
吾人ごじんは乃ち伯叔と共に余生を山谷さんこく蕨草けつさうに托し候はむかな。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
前者はしばらく、後者の要求に対しては吾人ごじんすこぶる惑ふ。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
吾人ごじん聯合れんがふの上に立つ。」
「いや、いや。そんなことはない。けだし、風病にかかって土になることはけだしすべて吾人ごじんまぬかれないことですから。けだし。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
人々口を開けば正義といい、人道という。正義、人道は古来吾人ごじんの標置する高き理想であるが、これを如何様いかようにして実現すべきか。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
この遷都せんとは、しかし、今日こんにち吾人ごじんかんがへるやうな手重ておもなものでなく、一をくだい慣習くわんしふによつて、轉轉てん/\近所きんじよへお引越ひきこしになつたのである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
吾人ごじんをして、ワーテルローの中に、ただワーテルローの中にあるもののみを見せしめよ。自ら求められたる自由はそこには少しもない。
だが吾人ごじんは、この種のあまりに科学的なる、あまりに芸術至上主義なる一派の詩派と詩人に対し、一つの根本的なる懐疑を持っている。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
個人の革命は今すでに日夜にちやに起りつつある。北欧の偉人イブセンはこの革命の起るべき状態についてつぶさにその例証を吾人ごじんに与えた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
未死の幽魂、尋ねんと欲するも、今いずれの処にかある。請う、吾人ごじんをして彼を九原きゅうげんの下より起し、少しく彼にいて語らしめよ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)