齟齬くいちが)” の例文
何も知らぬから、昇、例の如く、好もしそうな眼付をしてお勢の顔を視て、挨拶あいさつよりまず戯言ざれごとをいう、お勢は莞爾にっこりともせず、真面目な挨拶をする、——かれこれ齟齬くいちがう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
三年なりとも十年なりとも返報しかえしするに充分なことのあるまで、物蔭から眼を光らして睨みつめ無言でじっと待っててくりょうと、気性が違えば思わくも一二度ついに三度めで無残至極に齟齬くいちが
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今一度お勢のそでひかえて打附うちつけに掻口説かきくどく外、他に仕方もないが、しかし、今の如くに、こう齟齬くいちがッていては言ったとて聴きもすまいし、また毛を吹いてきずを求めるようではと思えば
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)