こうのとり)” の例文
「おゝ、何といふ厳かなお姫様の御入来であらうよ。あなたの頭上には金色の後光が燦然と輝き、何処からともなくこうのとりの翼の音が聞えるやうだ。」
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
小さな池に住んでいました一匹の亀が、その池に時々来る二羽のこうのとりから、いろいろ旅の面白い話をきかされて、自分でも空を飛んでみたくなりました。
文学以前 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
私はこの屋根裏部屋で「こうのとり物語」という習作を書いた。鸛が揺籃ゆりかごへ置いていった子供、若い日のアンデルセンのことを書いた。鳴尾君に読んでもらった。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
赤ん坊はこうのとりくわえて来て木の枝に置いて行くのだと云う風に子供に教えると聞いていたのに、矢張お腹から生れることを知っているのだなと思いながら、雪子はひとり微笑ほほえましさをこらえて
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
義勇飛行将校を志願して有名なギヌメールのシゴイニュ(こうのとり)隊へ入り、戦闘機に乗って十何機とか敵機を撃墜したそうで、シゴイさんのかん一という名は鸛部隊の〈鸛〉からとったんだそうだ。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ボボフとかいふひと襟飾ジャボーをつけた恰好がこうのとりそつくりだつたが、その人がもう少しでころげるところだつただの、リディナとかいふひとは緑いろの眼をしてゐる癖に自分では碧い眼だと思つてゐるだのと
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)