鶸色ひわいろ)” の例文
かへで 「若楓わかかへで茶色になるも一盛ひとさかり」——ほんたうにひと盛りですね。もう今は世間並みに唯水水しい鶸色ひわいろです。おや、障子しやうじがともりました。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
眞赤であつた西の空は、だん/\と桃色に薄れて、それがまた鶸色ひわいろに變つて行くまで、二人は眺め入つてゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
劇場の飾灯が、雪解けのもやに七色の虹を反射させていた。入口にシイカの顔が微笑んでいた。鶸色ひわいろの紋織の羽織に、鶴の模様が一面にしぼり染めになっていた。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
そう云えば今でも忘れないが、小翠花しょうすいか梅龍鎮ばいりゅうちんを演じた時、旗亭の娘に扮した彼はこの閾を越える度に、必ず鶸色ひわいろ褲子クウズの下から、ちらりと小さな靴の底を見せた。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)